Research Abstract |
有性生殖において,父方,母方由来の遺伝子を混合するDNA相同組換え(相同組換え)は,卵や精子などの配偶子を形成する際に必ず行われ,生命に遺伝的多様性を付与する重要な生命現象である.この反応は時に互いに似た配列を持つ領域でDNAを組換え,DNAに含まれる情報を混合し,新しい遺伝子,新しいタンパク質を創製する.現代まで動植物の新しい品種などを生み出してきた交配や育種技術は,まさにこの現象を利用したものだといえる.本研究課題の目的は,試験管内でこの相同組換えを制御して利用することにより,人工的に新規遺伝子,新規タンパク質を創出する基盤技術を構築することである.昨年度までに試験管内相同組換えに必要と考えられるタンパク質群(RecA, RecF, RecJ, RecO, RecR, RecX, SSB)の大量調製を終えたので,本年度はそれら蛋白質群を用いて,相同組換え反応に必要な各素過程((1)二本鎖DNAの一本鎖への加工,(2)SSBで覆われた単鎖DNAの除去)について試験管内での再構築を試みた.その結果,(1)については,RecJとSSBを用いることにより,一定の効果を得ることができたが,さらにその効率を上げるという課題が得られた.(2)については,SSBに覆われた単鎖DNA領域をRecO, RecRの二種のタンパク質により,RecAへ受け渡すことに成功し,そのメカニズムに対する知見を得た.さらに,その過程を阻害する変異タンパク質を構築し,系を自由に遮断することに成功した.
|