2009 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物に共通な遺伝子発現調節領域のゲノムワイドマッピング
Project/Area Number |
21200064
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
荻野 肇 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 准教授 (10273856)
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Keywords | ゲノム / 遺伝子 / 発現制御 / 発生・分化 / 比較ゲノム / 進化 |
Research Abstract |
(1) 解析対象遺伝子の選定 脳神経系の発生調節あるいは遺伝病の発症に関与するものとして、まずPaxファミリーを初年度の解析対象に選んだ。また研究コミュニティーからの要望に応え、Otx及びSixファミリー等も解析対象とした。 (2) 保存非コード領域の同定とそのエンハンサー活性の解析 選定した遺伝子群について、ヒトからフグまで保存されている非コード領域を同定し、トランスジェニク実験によって初期神経胚期あるいは尾芽胚期のエンハンサー活性を調べた。 Pax2/5/8遺伝子群は、進化の過程でゲノムの重複により、1つの祖先型遺伝子から形成されたパラロググループである。同じパラロググループの中では、祖先型のシス調節機構が部分的に保存されている可能性が考えられ、実際、ゲノム重複によって生じたと考えられる相同なエンハンサーのペアがPax2とPax8の間で1組、Pax2とPax5の間で5組見つかった。Pax2とPax5の間で見つかったペアの1組は前腎で活性を示したが、通常、前腎ではPax2だけが発現し、Pax5は発現しない。しかしPax2の発現を阻害したところ、前腎でPax5が発現し、Pax2の代わりに下流遺伝子を活性化して前腎形成を補償することが明らかになった。この結果から、ゲノム重複によって生まれたエンハンサーの1つが進化の結果、パラログ遺伝子の間で発現を補うためのフェイルセーフ機構を発展させたことが示唆された。 Otx2遺伝子については、マウスの臓側内胚葉エンハンサーに相同なゼノパスのゲノム領域がシュペーマンオーガナイザーに隣接する深部内胚葉でエンハンサー活性を示すことを発見した。Six1遺伝子については両生類と哺乳類の間で保存されているプラコードエンハンサーを同定した。
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