2011 Fiscal Year Annual Research Report
モバイルセンサネットワークのための効率的なデータ処理機構に関する研究
Project/Area Number |
21220002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西尾 章治郎 大阪大学, 大学院・情報科学研究所, 教授 (50135539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 隆浩 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (20294043)
義久 智樹 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00402743)
神崎 映光 大阪大学, 大学院・情報科学研究科, 助教 (80403038)
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Keywords | スマートセンサ情報システム / 移動体通信 / 情報システム / ネットワーク / 情報通信工学 |
Research Abstract |
モバイルセンサネットワークでは、柔軟かつ効率的にデータを処理できるようにモバイルセンサノードを利用する必要があるため、従来のモバイルコンピューティングやセンサネットワークの枠組みとは異なる新たなデータ管理技術が必要となる。本研究では柔軟かつ効率的にデータ処理を行うことを目的とし、研究期間内に下記3点を明らかにしてモバイルセンサネットワークのためのデータ処理機構を構築している。 (1)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配置技術 本年度は、これまで行ってきたTop-k検索手法を改善する一方、エージェントと呼ばれるプログラムをセンサノードに配置してデータ収集する場合に、ネットワーク内の通信量を軽減できるエージェント配置技術についても研究した。センサノードの地理的粒度を考慮してエージェントを配置したり、遺伝アルゴリズムを用いて配置経路を決定することで、通信量を削減して効率的にデータ収集できる。 (2)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配信技術 モバイルシンクノードが通信時間内により多くのデータを収集するための、センサデータの予測値の配信技術を研究した。モバイルシンクノードが繰り返しデータ収集している場合には、これまでに収集したデータを用いて、これから収集するセンサデータの値を予測できる。提案手法では、予測値を平面で表して係数のみ配信し、許容誤差範囲外の値をもつセンサデータのみ収集することで、冗長な通信を削減できる。 (3)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的な通信技術 消費電力を抑制しつつ、高信頼なデータ収集を実現する通信方式について研究を進めた。壁等の障害物が存在する環境では、電波到達特性が複雑になる。提案手法では、各センサノード間の電波到達特性を測定し、環境に応じて自律的に送信電力を設定することで、通信品質を維持しつつ消費電力を抑制する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題には、これまで積極的に研究を遂行した結果、各サブテーマについて当初の目標を超える研究の進展があった。 (a)当初の目標は、各データの被アクセス特性や各センサノードの位置といったセンシング状況を考慮してモバイルセンサノードのデータストレージに配置する複製を効果的に選択することであったが、センシング状況のみならず、利用者の検索内容(Top-k検索)やデータ可用性まで考慮した。特に、複製データがある環境においてデータの可用性と拡散速度を評価するための幾つかの性能指標を考案した研究成果は、世界最高峰の論文誌であるIEEE Transactions on Mobile Computingに掲載された。 (b)当初の目標は、通信時間や通信量といった通信状況を考慮して各センサノードがモバイルセンサノードにデータ配信することであったが、通信状況を考慮するだけでなく、データの値を予測して配信したり、ファイル形式のデータの配信にも対応したりした点で当初の目標を超える研究の進展があったといえる。本研究成果は権威ある国際論文誌IEEE Transactions on Consumer Electronicsに掲載された。 (c)当初の目標は、センサノードやモバイルシンクノードの移動特性を考慮して通信量を抑えてデータ転送を行うことであったが、これに加えてシステム稼働時間の長寿命化にも取り組んだ。各センサノードが起動するか休止するかを自律的に判断することで、データ分布の再現率を維持したままシステム稼働時間を長くできる。本研究成果は通信技術に関するトップレベルの国際会議IEEE ICCで発表予定である。 さらに、研究期間の初期からサブテーマの統合に向けて、モバイルセンサネットワークのための効率的なデータ処理システムを開発している。本システムには、100を超えるセンサノードが接続されており、これほどの大規模なモバイルセンサネットワークにおけるデータ処理システムは、国際的にも類をみない。以上のように、本研究課題は当初の目的を超える研究の進展がある。
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Strategy for Future Research Activity |
各サブテーマの今後の研究の推進方策について説明する。 (a)今後は、Top-k検索と並んでモバイルセンサネットワークにおいてもう一つの重要な検索である位置依存検索について、効果的なデータ配置および検索技法に関する研究を推進する。具体的には、データを所持するセンサの移動によって、指定場所で発生したデータの検索が困難になることを考慮して、センサ間で適切にデータおよび複製の再配置を行う手法を検討する。さらに、センサの移動パターンがセンシング可能範囲に与える影響を定量的に検証可能な性能指標について、検討を行う予定である。また、実データ(ユーザの移動ログやアクセスログ)を用いた実験や実機実験など、実環境に即した評価実験により、考案手法の有効性を十分に検証する。 (b)今後、ファイル形式のデータの配信において、配信できるファイルサイズを決定するために、モバイルシンクノードの速度や通信履歴、場所等を考慮する必要がある。例えば、速度が速い場合には通信時間が短くなるためファイルサイズを小さくしたり、遅い場合には大きくすることを考えている。また、センサ値の予測に関して、予測値の精度を上げてさらに多くのデータを配信できるようにする必要がある。予測には、これまでの研究では空間、時間的に線形補間を行って予測値平面の係数を用いていたが、センサデータの特徴をとらえて予測することを考えている。 (c)今後は、モバイル端末の地理的な偏りや通信量を具体的に計測して、より実環境に近い状況でシミュレーションによる性能評価が行う。得られた評価結果から、提案手法における問題点を洗い出し、さらなる改善を目指した手法の設計を進める。一方、消費電力の削減を目指した通信制御手法については、我々が実装しているセンサネットワークテストベッドを整備し、障害物の配置が異なる等のさまざまな環境を構築することで、多様なネットワーク環境における実験を行う。
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