2012 Fiscal Year Annual Research Report
モバイルセンサネットワークのための効率的なデータ処理機構に関する研究
Project/Area Number |
21220002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西尾 章治郎 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50135539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 隆浩 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (20294043)
義久 智樹 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00402743)
神崎 映光 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (80403038)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | スマートセンサ情報システム / 移動体通信 / 情報システム / ネットワーク / 情報通信工学 |
Research Abstract |
モバイルセンサネットワークでは、柔軟かつ効率的にデータを処理できるようにモバイルセンサノードを利用する必要があるため、従来のモバイルコンピューティングやセンサネットワークの枠組みとは異なる新たなデータ管理技術が必要となる。そこで本研究では柔軟かつ効率的にデータ処理を行うことを目的とし、研究期間内に下記3点を明らかにしてモバイルセンサネットワークのためのデータ処理機構を構築している。 (1)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配置技術:Top-k検索と並んでモバイルセンサネットワークにおいて重要な検索である位置依存検索について、効果的なデータ配置および検索技法に関する研究を推進した。具体的には、センサの移動によって、指定場所で発生したデータの検索が困難になることを考慮して、センサ間で適切にデータの再配置を行う手法や、その環境下における上位k個の最近傍データを検索する手法を設計した。 (2)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配信技術:モバイルシンクノードの移動特性や、センサ値の変化特性といったセンシング環境の特性を利用できるように、処理を行うプログラムもデータの一部として配信する技術に関して研究を推進した。データの送信先となるサーバ側のプログラムと連携して処理するプログラムをセンサ側に配信することで、様々な処理を効率よく行える。 (3)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的な通信技術:提案したエージェントを用いたデータ収集技術の性能向上に関して研究を推進した。提案手法では、センサデータの特性を考慮して、収集するデータ量をさらに削減する。また、一部のデータが損失した場合に、エージェントを用いてその再収集を行う。加えて、自由に移動する多数のモバイルシンクを用いて効率的にセンサデータを収集する通信制御技術についても研究を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配置技術:位置依存検索については、概ね当初の計画通りに研究が進行した。さらに、海外研究者との共同研究として、一般的なデータ検索のための最適データ配置についても研究を進め、効率的な手法を考案することができた。これらの研究成果は、モバイル分野で著名な論文誌や国際会議等において公表されている。そのうちの一編は、モバイル環境におけるデータ管理分野で世界最高峰の国際会議であるIEEE MDM 2012において、最優秀論文賞(次点)を受賞した。 (2)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配信技術:当初の計画では、効率的なデータ配信技術のみを研究する予定であったが、研究が計画以上に進展し、データだけでなく、データを処理するプログラムの配信技術にまで研究が及んだ点で、当初の計画以上に進展しているといえる。本研究成果を著書にまとめたものが、国際的な学術図書出版社として著名なTaylor and Francisから出版されることが決定している。 (3)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的な通信技術:当初の目標は、センサノードやシンクノードの移動特性が通信方式の性能に与える影響を詳細に調査することであったが、移動特性の偏り等によって生じるデータ欠損に対応した手法の設計まで完了しただけでなく、データ特性や無線信号伝搬特性も考慮した手法が確立できた点で、当初の目標を超える進展があったといえる。本研究の成果は、国際会議において高い評価をうけ、その推薦によって2編の国際論文誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配置技術:今後は、Top-k検索およびk最近傍検索の高性能化をさらに目指し、これまでに考案した手法の拡張を行う予定である。特に、研究の取りまとめを意識し、詳細なシミュレーション実験等を行うとともに、実データを利用した評価実験およびプロトタイプシステムの構築等も視野に入れて研究を推進する。さらに、考案した手法の関係を整理し、それらの統合利用の方法などについても検討する予定である。 (2)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的なデータ配信技術:今年度は、ライブカメラの映像をパソコンやスマートフォンといった様々な再生端末に向けて異なるビットレートで配信するように、ストリーミングセンサデータを異なる周期で配信する場合に、配信元にかかる通信負荷を軽減する手法を考案する。同時刻のセンサデータを再生端末間で再配信することで、通信負荷を分散できて配信元の通信負荷の軽減につながる。 (3)モバイルセンサネットワークのための柔軟かつ効率的な通信技術:センサノードやシンクノードの移動特性を考慮したデータ収集について、移動特性の将来的な変化を推測し、データ転送効率をさらに向上させる手法について検討する。また、ノードの移動特性、データ分布の時空間的特性、無線信号の伝搬特性など、個別に考慮して設計してきた手法の統合について検討を進める。さらに、これまでに収集した実データ(センサデータやノードの移動ログ)を用いたシミュレーション実験や、実環境上に構築したテストベッドにおける実験を通して、提案手法の実環境での有用性について十分に検証する。 さらに、研究成果を世界的に周知するため、トップクラスの国際論文誌や国際会議への論文の採択を視野に入れた、高いレベルの研究成果を達成することを目指す。
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