2009 Fiscal Year Annual Research Report
内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達の脳機能・脳病態における役割の解明
Project/Area Number |
21220006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 方伸 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授 (40185963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
少作 隆子 金沢大学, 保健学系, 教授 (60179025)
岸本 泰司 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90441592)
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Keywords | 神経科学 / シグナル伝達 / シナプス / 生理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
平成21年度は、以下の4項目について調べ、それぞれ当初の目的を達することができた。 1.海馬培養ニューロンのペアから、内因性カンナビノイド(eCB)感受性の抑制性シナプス応答を記録し、Protease-activated receptor 1(PAR1)のアゴニストを投与すると一過性の抑制性シナプス応答の減弱が起こった。これがCB1カンナビノイド受容体のブロッカーで消失したことから、PAR1活性化によってeCBが放出され、逆行性のシナプス伝達抑圧が起こることが考えられた。 2.小脳プルキンエ細胞、海馬ニューロン及び線条体中型有棘細胞において、eCBによる一過性抑圧(eCB-STD)が、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の合成酵素(DGLα)のKOマウスにおいて完全に消失していたが、DGLβのKOマウスでは正常であった。また、小脳、海馬、線条体の2-AG含有量はDGLαKOマウスでは正常マウスに比べて20%程度に減少していたが、DGLβKOマウスでは正常であった。これらの結果から、逆行性シグナルを担うeCBはDGLαによって作られる2-AGであることが確定した。 3.in vivoマウス小脳のプルキンエ細胞からホールセル記録を行い、自発的に発生するシナプス電流が、脱分極によって一過性の減弱が起こることを見出した。 4.DGLαのプルキンエ細胞特異的KOマウスでは、小脳依存性運動学習である瞬目反射条件付けが障害されていた。また、2-AG分解酵素(MGL)のブロッカーを投与したマウスでは、瞬目反射条件付けの獲得は正常だが消去が起きにくくなっていた。この結果、eCB系は小脳依存性の運動学習に促進的に作用することが明らかとなった。
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