2011 Fiscal Year Annual Research Report
多波長ラインサーベイによる星形成から惑星系形成に至る化学進化の解明
Project/Area Number |
21224002
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182624)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 南美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70533553)
酒井 剛 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20469604)
高野 秀路 国立天文台, 野辺山宇宙電波観測所, 助教 (00222084)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VERA観測所, 助教 (10325764)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
|
Keywords | 電波天文学 / 宇宙物理学 / 超伝導デバイス / 惑星起源 / 星間化学 / 星形成 / 星間分子 / テラヘルツ |
Research Abstract |
本研究は、多波長スペクトル線サーベイ観測によって星形成から惑星系形成に至る化学進化を明らかにすることを目的としている。そのために、国立天文台45 m電波望遠鏡によるミリ波帯の観測、国立天文台ASTE 10 mサブミリ波望遠鏡による340 GHz帯(サブミリ波)の観測、および、同望遠鏡によるテラヘルツ帯(800-1500GHz)の観測を行う。そのために、70-85 GHz帯およびテラヘルツ帯の受信機を製作する。 本年度は、前年度に引き続き、特異に炭素鎖分子が豊富な原始星L1527、および、双極分子流による衝撃波領域L1157B1のスペクトル線サーベイの観測を進め、完了した。L1157B1のサーベイではリンを含む分子PNの検出に成功し、論文として出版した。L1157B1でこの分子が検出されたことは、リンの化学において衝撃波が重要な役割を果たしていることを示すもので、重要な成果と言える。L1527についても、c-C3D2やCyclopropenoneのスペクトルを検出するなどの成果が挙がっている。ASTE 10 m望遠鏡によるスペクトル線では、ホットコリノ天体と考えられるSerpens SMM4、および衝撃波領域BHR71の350 GHz帯での観測を完了した。Serpens SMM4のスペクトルはホットコリノと矛盾ない振る舞いを示しているが、硫黄を含む分子が系統的に少ないなどの特徴的傾向が見られた。 テラヘルツ帯の観測では、製作した超伝導受信機をASTE 10 m望遠鏡に搭載し、900 GHzで試験観測を行った。その結果、月、木星の連続波観測とともにオリオン分子雲からの13CO輝線の検出にも成功した。悪天候のため、限られた観測期間ではあったが、試験搭載の目的を達成し、翌年度以降の本格的科学運用への見通しをつけることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミリ波帯、サブミリ波帯のスペクトル線サーベイは順調に進行しており、星形成領域の化学組成の全貌が捉えられつつある。一方、70 GHz帯の受信機を国立天文台45 m電波望遠鏡に、THz受信機を国立天文台ASTE 10 m望遠鏡に、ともに成功裏に搭載し、本格観測を行うことができるようになっている。今後、これらの新規受信機を活用し、重水素分子や基本的水素化物の定量を進めることで、当初の目的を達成できる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
前の項目で記したように、研究計画は順調に進行している。今後は新規に開発した受信機(70 GHz帯受信機およびTHz受信機)を最大限活用し、成果を挙げていきたい。また、これまでに取得した星形成領域のスペクトル線サーベイ観測のデータを吟味し論文として出版する。それらを総合して、星形成領域における化学的多様性の大要を明らかにするとともに、ALMAやPdBIなどの干渉計を用いた観測を推進して、その化学的多様性が原始惑星系円盤にどのようにもたらされていくかを解明していきたい。
|
Research Products
(8 results)