2012 Fiscal Year Annual Research Report
多波長ラインサーベイによる星形成から惑星系形成に至る化学進化の解明
Project/Area Number |
21224002
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182624)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 秀路 国立天文台, 野辺山宇宙電波観測所, 助教 (00222084)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
酒井 剛 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20469604)
坂井 南美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70533553)
|
Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
Keywords | 電波天文学 / 宇宙物理学 / 超伝導デバイス / 惑星起源 / 星間化学 |
Research Abstract |
本研究では70 GHz帯および0.9-1.5 THz帯の受信機を開発し、それぞれ国立天文台45 m電波望遠鏡およびASTE 10 mサブミリ波望遠鏡に搭載し、星形成領域の化学組成を明らかにするとともに、ALMAのデータも併用して原始星進化に伴う化学組成の進化に切り込むことを目的としている。70 GHz帯受信機については定常観測を実現し、重水素化分子の基本スペクトル線が観測できるようになった。星なしコアおよび星形成領域の重水素濃縮度の精密測定を行った。0.9-1.5 THz帯の受信機については、HEBミクサ受信機として世界最高性能を実現した。そのミクサを用いて受信機を製作し、チリ共和国のアタカマ砂漠(標高4800 m)にあるASTE 10 mサブミリ波望遠鏡に搭載してテスト観測を行った。平成23年度の成功に引き続き、本格的な科学観測を目指したが、平成24年度には降雪によるサイトへのアクセス困難という状況に見舞われ観測期間が大幅に短縮された。それにも拘わらず、平成24年度には受信機搭載に成功し、動作も確認できたが、その直後に生じた望遠鏡の発電機トラブルのため、実験を平成25年度に繰り越す必要が発生した。平成25年度は悪天候のため十分な観測はできなかったが、0.9-1.5 THz帯の受信機を運用する上で貴重な経験を積むことができた。一方、ALMAのCycle0データが平成24年度末に届けられた。L1527原始星に対する観測では、炭素鎖分子について非常に興味深いスペクトルと分布が得られており、物理モデル構築を含めた詳細解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
70 GHz帯のSISミクサ受信機については、国立天文台野辺山観測所の都合により搭載と定常運用がやや遅れたが、本年度で立ち上がり、70 GHz帯での観測で威力を発揮しつつある。この周波数帯には基本的分子の重水素化物(DCO+, DCN, DNC,CCD, N2D+など)の基底状態スペクトル線が存在する。その精密測定から、重水素濃縮度(重水素化分子と通常分子との比)を精度よく求めることができる。重水素濃縮度は分子雲コアの進化指標として重要なので、新しい70 GHz帯受信機はそのような研究を大きく後押ししつつある。実際、重水素化物の超微細構造の解析が可能となり、光学的厚みの評価ができるようになった結果、重水素濃縮度を正確に評価できるようになった。0.9 -1.5 THz帯の観測については、受信機開発ではすでに世界最高性能を達成している。ASTE 10 m望遠鏡の発電機システムのトラブルや悪天候という外的要因のために本格観測に至っていないが、それらがクリアされれば十分な成果を挙げられるシステムまで磨き上げられている。さらに、ALMAの初期科学運用(Cycle 0)のデータが届けられ、原始星近傍の化学組成分布について非常に興味ある結果が期待される。これらを総合して、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきた70 GHz帯受信機、0.9 -1.5 THz帯受信機を含め、多波長でのスペクトル線サーベイ観測を展開し、成果をとりまとめる。すでに低質量星形成領域であるSerpens SMM4などで345 GHz帯のスペクトル線サーベイを完了しており、現在、野辺山45 m電波望遠鏡を用いて70-115 GHz帯の観測を行いつつある。これにより、星形成領域の化学的な多様性がより鮮明になってくると期待される。同時に、より質量の大きな原始星についても同様のスペクトル線サーベイを行い、原始星の質量が化学組成に与える影響についても調べる。また、ALMA Cycle 0のデータを解析し、原始星近傍の化学組成を高空間分解能で調べる。原始星近傍の組成を見ることは、原始星進化に伴う化学組成の進化を推し量る重要な指標となるので、この視点に重きを置いて研究を進めていきたい。
|
Research Products
(18 results)