2011 Fiscal Year Annual Research Report
広視野ガンマ線カメラによるMeVガンマ線銀河内天体気球観測
Project/Area Number |
21224005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷森 達 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10179856)
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Keywords | 核ガンマ線 / かに星雲 / コンプトン散乱 / ガス増幅検出器 / コンプトンカメラ / Time Projection Chamber / 気球実験 / 陽電子電子対生成 |
Research Abstract |
23年度の経費を繰越、遅れが出た気球用ガンマ線装置を含む気球観測システムの組み上げを以下のように行った。(1)電子飛跡検出用30cm-cubicTPC容器を完成、新型小型読み出し回路を搭載し、電子飛跡検出評価実験を行い、ほぼ100%コンプトン散乱電子飛跡検出を確認、これは当初予定の10倍近い大幅な改善であり、前年度時間を掛け、再構成法および回路開発を行った成果である。これによりこの次の資金で達成予定であった感度の倍の感度が実験当初から実現出来ることになり大幅な実験の進展が今後期待できる。(2)反跳ガンマ線を捕らえるシンチレーターアレイを新型の読み出し回路を用いて行った。また同時に小型高圧電源回路を開発し、回路と同じ場所に搭載、非常に小型軽量シンチレーターアレイモジュールの開発に成功した。18モジュールすべての校正も終了し、TPCの周りに取り付けた。(3)ETCCの大型化によりデータ量が以前の10倍以上になる。それに対応するためのデータ収集系を製作した。 (4)全体の電源系を設計、製作した。外部電源の24Vから必要な多種類の電圧を作り出せ、システム管理を容易にした。(5)気球用圧力容器をISASから借用し、内部にETCC取付治具を設計、ETCC、電源等をとりつけ、1月初めに検出器システムを完成された。ガンマ線検出にも成功し、予定通りにシステムを完成させた。25年2月には予定通りISASで熱真空試験を行い、ほぼ予定の性能を得たが、外部気温により冷えすぎの可能性を発見、内部に断熱材の導入を検討している。ガンマ線の測定試験もシミュレーションの予想とほぼ一致していることを確認した。 [連携研究者] 窪秀利 京都大学大学院理学研究科:シンチレータ、回路、周辺装置
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度繰越時に予定していたとおり24年度予定してた25年1月に気球観測系が完成し、簡単なガンマ線試験、ISASでの熱真空試験等すべて予定通り終了することができた。ただ30cm-cubicTPCの電子飛跡検出が非常にうまく進み、当初から100%近くコンプトン散乱電子の3D検出に成功、高い検出感度が実現できた。これにより当初予定の10倍近い感度が得られ、数年先の次の資金で予定していたシンチレーターの増強等が無くても、気球計画最終予定の感度の2倍を達成、ガス種と圧の調整で、1,2年後には当初予想の20倍という感度改善が期待できるまでになった。この進展は非常に大きく、気球実験で今までの衛星実験以上の感度が期待できる可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、JAXAの国内気球では1時間以上の科学観測は不可能であるというJAXAの決定があり、ガンマ線観測を行うことはできず、またスエーデン政府からはかに星雲検出などの短時間気球実験による実証が求められている。このため現在、米国等の気球を検討している。それと平行し、加速器による宇宙環境再現試験という新しい試みを実施し、宇宙環境下でのETCCの感度を実証を行い、迅速にETCCのMEVガンマ線天体観測が行えるようにする。またETCCのガス種・圧の調整を行い、10cm^2という高感度を実証し、ETCCがMeVガンマ線天文学を開拓可能な世界で最右翼の装置であることを示す。
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