2012 Fiscal Year Annual Research Report
広視野ガンマ線カメラによるMeVガンマ線銀河内天体気球観測
Project/Area Number |
21224005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷森 達 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10179856)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 核ガンマ線 / かに星雲 / コンプトン散乱 / ガス増幅検出器 / コンプトンカメラ / Time Projection Chamber / 気球実験 / 陽電子電子対生成 |
Research Abstract |
この科研費で開発した気球用ガンマ線観測装置の改善で、23年度のJAXAの国内気球実験所の要求で観測が可能な性能になった。しかしこの観測所の条件のさらなる悪化により1,2時間の高層大気での観測が不可能なことが判明、JAXAが当面国内での気球科学観測全体の中止を決め、国内での気球実験の可能性が完全に消えた。これに対応して以下の対策を25年度に実施した。 (1)早急に気球実験装置の宇宙環境での性能評価を行うため、25年度に大阪大加速器ビームによる宇宙環境模擬試験を行うことになった。これは加速器により宇宙と同様、ガンマ線、中性子など多様な放射線が混在した宇宙に近い放射線環境を世界で初めて実現し、さらに加速器による強度変調の特徴を活かし、宇宙以上の放射線環境試験を実現することを目指した。 (2)装置以外の電源系の制作を終了、真空試験も実施する。 (3)日本以外でかに星雲の観測が可能な北半球の海外の気球実施国で実験の可能性を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要にある3つの項目を以下のように実施し、予想以上の成果を得た。 (1)大阪大RCNPの加速器を用いて秋に宇宙環境模擬試験を行うことになった。水標的に140MeV陽子ビームを照射し、ガンマ線、中性子など多様な放射線が混在した宇宙に近い放射線環境の作成に成功、ビーム強度調整により宇宙より5倍以上強い放射線強度環境を実現、ETCCは予想を5倍程度上回る1000Hzまでの動作確認が行え、さらに雑音除去により弱線源の画像化に成功。ETCCが宇宙での安定動作ばかりでなく、高い画像能力まで実証でき、従来のMeV観測の問題点を克服できたことが実証できた。 (2)装置以外の電源系の制作を終了、真空試験を実施し、改良点を改善した。 (3)ガンマ線天文学の世界的な中心である米国ゴダード宇宙センターとの共同研究を開始し、かに星雲の観測に最も適した米国での気球打ち上げをめざすこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
理由で述べたように現在の性能でこのETCC観測装置は1日程度の飛行観測で十分かに星雲を観測する能力が実証でき、さらに真空試験や電源系開発など気球観測に必要な項目もクリアしてきた。しかし海外での気球実験は経費がかかり、多数行うことは困難となる。そのためETCCの観測性能をさらに数倍向上させ観測の確度をあげ、さらに偏光観測という新しい可能性も追求し、効率のよい気球実験実施が可能な体制を作り上げていく。
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