2011 Fiscal Year Annual Research Report
水を溶媒として活用する新しい有機化学ワールドの構築
Project/Area Number |
21225002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 修 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (50195781)
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Keywords | 水溶媒 / 有機合成 / 水溶性分子 / 位置選択性 / 固定化触媒 |
Research Abstract |
1、水中での触媒的不斉合成の開発…スカンジウムトリフラートとキラルビピリジンからなる触媒存在下におけるα,β-不飽和ケトンに対するチオールの不斉Michael型付加反応において、基質としてβ位が非対称構造のα,β-不飽和ケトンを用いると、不斉プロトン化反応が可能であることが明らかになった。 2、水溶性分子を用いる水中での効率的反応の開発…水中で機能する単一分子触媒の創成について検討を行った結果、分子量約800の単一分子の構築に成功した。この分子は水中で水溶佐のホルムアルデヒドを用いる不斉ヒドロキシメチル化反応を円滑に進行させ、アルドール反応を触媒する酵素であるII型アルドラーゼと類似の挙動を示すことも見いだした。 3、水溶液中における特異的な炭素-炭素結合生成反応の開発…酸化銀がアルデヒドのアリル化を水溶媒中において効率的に触媒することを見いだし、毒性の低いケイ素アリル化剤を用いた場合において、一万回に迫る高い触媒回転率を達成した。 4、水の中で特異的に機能する触媒の開発…ベンズアルデヒドとアリルホウ素試薬を基質として用いたアリル化反応において、水系溶媒中での反応と有機溶媒中での反応で、異なる反応性をもってホモアリルアルコールが生成することを見出した。 5、水中で機能する固定化触媒の開発及び反応場の研究…水溶液中で機能する新たな高分子固定化触媒の開発を行い、酸化的アミド合成反応を開発し、アンモニア水を用いると1級アミドが収率よく合成できることを明らかにした。 6、水を溶媒とするフロー系反応の開発…ポリシランを担体とするパラジウム触媒をカラムに充填し、反応基質の水溶液と水素を添加することで、水素化フローシステムによる還元反応を実現した。生産性の高いシステムを構築することができ、医薬品生産等への展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において、水を溶媒とする有機化学というテーマを全体的に効率よく推進するため、6つのテーマを設定しそれらを相互に連携させることを考案した。各サブテーマが予想以上に展開して、それぞれが目標を超える進展があり、さらにサブテーマから得られたいくつかの結果が結びついて、それらが相乗的かつ加速度的に展開し、数多くの論文発表や学会発表を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の究極の目的は、水を中心とする有機化学を体系化することである。そのために、平成24年度以降も引き続き各サブテーマの研究を継続する。また、当初の予想以上の結果が得られ有機的に結びついたサブテーマについては、発展的に新しいサブテーマを立ち上げることも視野に入れる。設定している目標は、今回の研究課題の遂行中に発見した新しい知見に基づいており、その実現は研究期間中に十分可能であると考えている。
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Research Products
(26 results)