2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21225003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩谷 光彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60187333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 亮介 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 助教 (30509542)
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Keywords | 超分子錯体 / 超分子システム / 自己組織化 / 動的機能 / 金属錯体 |
Research Abstract |
当該年度は、以下の超分子錯体の合成と構造・機能解析を行い、超分子システムの構成要素の多様化を図った。 (1) 人工生体高分子を用いる金属配列制御システム:前年度までに、DNA二重鎖に金属イオンを配列する手法、およびDNAの導電性に対する金属錯体型塩基対の効果を明らかにした。当該年度は、分岐型金属ワイヤーを構築することを目的とし、三叉路型DNAの交差部分に金属錯体を導入する方法を確立した。各鎖に導入された三つの2,2'-ビピリジンがNi(II)錯体を形成することにより、三叉路型構造が著しく安定化された。また、ヒドロキシピリドン型ヌクレオチド三リン酸が天然のDNA ポリメラーゼの基質になり、鋳型DNA上で酵素によるDNA伸長反応が可能になった。この結果は、長鎖DNAの構築につながるものである。 (2) 合成配位子を用いる金属配列制御システム:両端に単座配位子を持つ湾曲型合成配位子を合成し、そのPd(II)およびPt(II)錯体がかご構造を形成することを見出した。その内部空間は、アニオン分子や金属錯体の配列場を提供する。 (3) 超分子カプセルや大環状化合物を用いた動的空間制御システム:亜鉛ポルフィリンに四つのビピリジンを導入した配位子は、亜鉛イオンの存在下、対称性の低いかご型錯体を構築することを見出した。このホスト分子は、様々なゲスト分子を非対称な形で取り込むことが明らかになった。 (4) 分子運動の連動システム:ランタン型Rh(II)二核錯体を鋳型とし、四つの歯車状トリプチセンカルボキシレートを配列させ、回転運動が連動するシステムを構築することに成功した。温度可変NMR測定により、Rh(II)-Rh(II)軸方向の二つの配位子を変えることにより、錯体の色は著しく変化し、回転運動にも大きな影響があることが見出された。外部刺激による回転運動制御に展開しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金属錯体型DNAの新しい構造モチーフについては、三叉路および四叉路構造DNA、新しい配位子型塩基、希土類イオンを用いる多重鎖形成等、期待された新しい構造を構築することができた。しかしながら、自動合成機の限界あるいは伸長反応の低収率等のため、長鎖人工DNAの合成は長年解決されていなかった。当該年度は、ヒドロキシピリドン型ヌクレオチド三リン酸が、天然のDNAポリメラーゼの基質となり、鋳型上のプライマー伸長反応が可能になった。また、伸長反応は鋳型DNA上のアデニンに対して最も効率良いという興味深い結果が得られた。これらの結果は期待以上のものであり、今後の長鎖DNAの合成ひいては長い分子ワイヤーの構築を進める上で、大きなブレークスルーとなるであろう。 両端に単座配位子を持つ湾曲型配位子によるPd(II)あるいはPt(II)二核かご型錯体は、期待どおり、様々なアニオン性分子を認識することが明らかとなった。さらに、負電荷を持つPt(II)錯体と正電荷を持つPt(II)錯体が、約1.7 nm離れたかごの両端のPt(II)二核中心の間に交互に配列することがわかった。この五核錯体の単結晶構造も決定され、溶液中でも同じ構造をとっていることが判明した。本錯体は、ディスクリートなマグナス塩の世界初の例であり、クーロン力に基づく自己集合化の制御により誕生したものである。 以上のように、特に金属配列に関する期待以上の独創性の高い成果が得られ、次年度の研究計画の幅を大きく広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の重要課題を以下に要約する。 (1) 三叉路・四叉路、ヘアピン、多重鎖構造を持つ金属錯体型人工DNAを構築し、金属配列様式の多様性を図る。金属イオンの種類と構造の相関、外部刺激による動的構造スイッチング機能等を検討する。また、天然のDNAポリメラーゼやリガーゼを用いたDNAの伸長反応や切断反応を駆使した合成方法を確立し、2次元・3次元構造体の構築とシステム化を図る。 (2) 光増感部位を導入した中空金属錯体を用いた、光触媒反応の開発を行う。特に、小分子の取り込み、活性化、変換反応を検討する。また、金属錯体にらせん性キラリティーを導入し、不斉反応にも展開する。 (3) 金属錯体を鋳型とするギア分子の集積化を行い、回転連動のメカニズム、回転速度、外部配位子による速度制御と金属中心の電子配置制御等を検討する。また、共有結合あるいは非共有結合により、複数のギア分子システムを連結し、長距離の分子運動伝搬を試みる。また、光エネルギーを動力源とする運動→物性変換メカニズムを導入し、光駆動分子運動と分子物性・機能の相関を明らかにする。 以上の方策により、次年度以降の研究を推進する予定である。
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Research Products
(26 results)