2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21225003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩谷 光彦 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60187333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 亮介 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 助教 (30509542)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 超分子 / 金属錯体 / 金属配列 / 配位空間 / 分子運動 |
Research Abstract |
超分子機能は、「要素」の精密合成と「結合」の定量的設計により創出される。本研究は、複数種の「要素」を合目的的に配列し、それらを形成する多様な「結合」を動的制御し、高い分子連携機能を構築する手法を確立することを目的とした。平成24年度の実績を以下に示す。 【人工生体高分子や合成配位子を用いる金属配列制御】これまでの二重鎖および三重鎖の金属錯体型DNAに加えて、本年度は、三叉路型DNAの交差部分に金属錯体を導入することに成功した。三叉路構造は著しく安定化され、金属中心のキラリティーが誘起された。本成果は現在、分岐型金属配列に展開中である。また、両端に正電荷を帯びた金属中心を持つかご型錯体の内部に正負の電荷を持つ白金錯体を交互配列させ、白金5個が積層したマグナス塩分子合成に成功した。 電荷相互作用により、金属の数と種類を制御した最初の金属配列法である。 【超分子カプセルや大環状化合物を用いた動的空間制御】亜鉛ポルフィリンのメソ位にビピリジンを導入した配位子と亜鉛イオンを用い、六つの亜鉛ポルフィリンから成るナノカプセルの合成に成功した。本カプセルは、高平面性分子を選択的に包接することができることを見出した。現在、光駆動型の多電子機能を検討中である。 【分子運動の連動制御】橋頭位にリンと窒素を持つトリプチセンを用い、二分子のトリプチセンがシス配位した白金錯体を合成し、結晶構造や溶液内構造を明らかにした。この白金錯体は光照射により、シス型がトランス型に異性化する。二つのトリプチセンはシス型においてのみ構造的に噛み合うため、本錯体は光誘起型の運動伝達のOn-Offシステムであると言える。また、ランタン型ロジウム二核錯体に四つのトリプチセンカルボン酸が配位した歯車型錯体の構築に成功した。ロジウムのアキシャル配位子の種類により回転速度が変わり、回転速度と可視吸収波長の間に相関があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の2点について、予想外の展開があった。 (1) 亜鉛ポルフィリンの四つのメソ位にビピリジンを導入した配位子と亜鉛イオンを用いて、6個の亜鉛ポルフィリンと計17個の亜鉛中心を持つ6量体型分子ナノカプセルの合成に成功したが、金属イオンの種類を変えると、自己集合構造が著しく異なる錯体が生成した。例えば、銀イオンを用いると、二つの亜鉛ポルフィリンが向かい合った2量体型のサンドイッチ型錯体が生成した。この向かいあったポルフィリン錯体の間に平面性の高いゲスト分子が挿入されるため、光化学的な反応に興味が持たれている。また、同じ亜鉛イオンを用いた場合でも、対アニオンの配位性を制御することにより、樽のような形を持つ4量体型分子カプセルが形成する。このカプセルはC60を効率良く取り込み、四つの亜鉛ポルフィリンに囲まれたC60を与える。このような錯体は、光誘起酸化還元反応の場を提供しうる。以上のように、同じ配位子を用いても、金属イオンや対アニオンの種類を変えることによる、全く異なるサイズと形状のナノ空間を構築することが見出された。これらの成果は計画時点では予想していなかったが、今後の研究に新しい方向を与えることである。 (2) 橋頭位にリンと窒素を持つ二つのトリプチセン誘導体が配位した白金錯体が、光照射により配位様式が劇的に変わり、その結果、歯車状の分子の噛み合いが制御されることが見出された。また、ランタン型ロジウム二核錯体に四つのトリプチセンカルボン酸が配位した歯車型錯体の回転速度が、ロジウムのアキシャル位の配位子の種類により回転速度や可視吸収波長が劇的に変わることが示された。これらの結果は、外部の刺激による、回転運動の速度や伝達様式の新しい制御法を与えるものである。これらの結果は、計画時点では予想していなかったが、分子運動の新しい制御法を示すものとして意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
超分子機能の発現には、多種多数の「要素」の集積様式とそれらを有機的につなぐ「結合」の動的過程の精密制御が必須である。これまでに、自己集合過程の分子配列法、分子認識や反応を制御する空間の構築法、動的機能構築のための分子設計、に関する多くの重要な知見が得られた。今後は、より高い分子連携機能を構築するために、自己集合情報を内包した有機分子や金属錯体の合理設計、より複雑な多成分系超分子の構築を可能にする物質構築原理の確立を目指す。以下に、具体的な推進方策を示す。 【一原子から生体高分子を鋳型とする金属配列制御】最近、一原子(例:炭素)を鋳型とする金属配列が特に貨幣金属の配列に有効であることを見出した。この方法は、あらゆる炭化水素化合物の水素原子をすべて金属に置換するという基本設計により、様々な一原子中心金属クラスターを生み出しうる。この金属配列法を生体高分子や合成分子を鋳型とする配列法と組み合わせることで、多様な金属配列法が可能となる。 【超分子や多孔性物質を用いた動的空間制御】大環状化合物に関する研究の一環で、大環状金属錯体が自己集積したチャネル構造を有する多孔性結晶を見出した。この結晶は分子認識能を持つ大環状化合物から成るため、チャネル表面には異なる複数の分子を位置選択的に配列することが可能である。今後は、このナノ空間を分子の貯蔵・分離、不斉反応、有機・無機高分子合成の場として活用し、さらに自己集合過程の機構解明を行う。 【分子運動の長距離伝達制御】金属イオンと合理設計した有機配位子の自己集合により、金属イオン上の配位子交換に基づく回転運動や、回転運動の連動システムを構築してきた。また、光刺激による金属イオン上の構造異性化に伴い、回転運動連動のOn-Offスイッチングに成功した。今後は、分子運動素子のオリゴマー化やポリマー化を行い、光による長距離運動伝達のスイッチングに挑戦する。
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Research Products
(25 results)