2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21225004
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
侯 召民 独立行政法人理化学研究所, 侯有機金属化学研究室, 主任研究員 (10261158)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 希土類アルキル錯体 / アルキルアルミニウム / スカンジウム / スチレン / アニソール / C-H結合活性化 / ヒドリドクラスター / アミジナート |
Research Abstract |
本研究では、優れた物性や新機能を持つ高分子材料の合成や高効率な物質変換反応を目指して、希土類錯体の特異な性質を利用した高活性、高選択的な錯体触媒の開発を行っている。本年度は、フルオレニル配位子を持つハーフサンドイッチ型スカンジウムジアルキル錯体によるスチレンの重合反応系にアルキルアルミニウムを添加することにより、活性が大幅に向上することを見出した。DFT計算により触媒活性化の機構を検討した結果、まずAliBu3が錯体に配位したTHFを引き抜き、続いて[Ph3C][B(C6F5)4]との反応によりTHFフリーのカチオン性アルキル活性種が生成することによって活性が向上することが示唆されている。また、カチオン性希土類アルキル触媒にアニソールとオレフィンを反応させると、触媒がアニソール誘導体のメトキシ基へ配位することによりC−H結合が位置選択的に活性化され、アルキル化が起こることを見いだした。これは、アニソールをオルト選択的にアルキル化した最初の例である。 一方、アミジナート配位子を有するジアルキル錯体が水素ガスとの反応により、3つの架橋ヒドリドと1つの末端ヒドリド配位子を有するイットリウム錯体の合成に成功した。それらの反応性を詳細に調べた結果、末端ヒドリド配位子による炭素-酸素結合開裂や炭素-窒素、炭素-炭素三重結合への付加反応がきわめて温和な条件下進行し、対応する錯体を収率よく与えることがわかった。このとき、架橋ヒドリド配位子は反応性を示さず、末端ヒドリド配位子が高い反応性を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類アルキル触媒を用いた重合系にアルキルアルミニウムを添加することにより、重合活性が大幅に向上することを見出し、アルミ化合物の役割をDFT計算により明らかにした。また、希土類アルキル触媒を用いることによってC-H結合活性化を経由するアニソール類のオルト-アルキル化反応を開発した。さらに希土類ヒドリドクラスターにおける末端ヒドリド配位子の高い反応性を明らかにした。これらは、従来の錯体では実現することが困難な反応であり、おおむね順調に研究が進展しているものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい構造を有する希土類錯体の合成とそれを用いる新反応の開拓を中心に、様々なカチオン性希土類アルキル錯体、複数の活性サイトを有する希土類または4族ポリヒドリド錯体、特異な基質協同活性化効果が期待できる希土類とd–ブロック遷移金属を合わせもつ異種多核金属ポリヒドリド錯体、などについて重点的に検討を行い、従来の触媒では実現困難な新しい物質変換反応やより高選択的・高効率的な重合/共重合反応、有機合成反応の開発を目指す。
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Research Products
(38 results)