2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属触媒の複合利用による安定化学結合の活性化と合成的変換
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21225005
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
檜山 爲次郎 中央大学, 研究開発機構, 機構教授 (90026295)
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Keywords | 不活性結合 / 金属触媒 / ルイス酸 / 協働触媒 / 炭素-炭素不飽和結合 / ポリフルオロアリール基 / 複素芳香族化合物 / ホルムアミド |
Research Abstract |
今年度は交付申請書に記載したとおり、ひきつづいて異なる金属触媒および不飽和結合を協働利用し、有機分子の中でも反応性に乏しい炭素-水素、炭素-炭素を活性化し、炭素-炭素不飽和結合への付加により新たな炭素-水素,炭素-炭素結合を形成する反応を研究した。代表的な結果を以下に記す。 アルキニルアリールエーテルのアルキノキシ基へのパラジウム錯体の求核攻撃を利用して炭素-水素結合を活性化し、アルキンとの付加環化反応により複素環化合物ベンゾピラン類が合成できることを見つけた。ベンゾピラン類は、薬理活性化合物の基本骨格の合成に有用であるとともに、新たな有機材料分子の合成に有用である。本系は、アルキンが炭素-水素結合活性化の配向基として利用できることを初めて示したものである。本反応には、アルキン以外にもノルボルネンやアレンも適用可能であることを予備的に認めている。 2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリルの炭素-シアノ結合を選択的に活性化し、アルキンへの付加をニッケル/BPh_3協働触媒により達成した。原料のポリフルオロベンゾニトリルの炭素-水素および炭素-フッ素結合をまったく活性化させずに、付加生成物のアリール炭素-水素結合を活性化させて、別のアルキンと反応させることができる。反応機構の詳細を突き止めるため2,3,5,6-テトラフルオロベンゾニトリルとNi(O)錯体との量論反応を検討したところ、BPh_3が存在すると酸化的付加が進行し、炭素-シアノ結合のみを活性化することが分かった。本反応は、ポリフルオロアリール基を含む液晶分子などの各種材料化合物の合成に期待できる。 ニッケル/アルミニウム協働触媒とかさ高いIAd配位子を用いて、ジメチルホルムアミドの炭素-水素結合への末端アルケンの挿入が逆マルコフニコフ則に従って進行させることに成功した。生成物を還元すると直鎖のアルコールへ容易に変換できるため、毒性の高い一酸化炭素を用いないアルコール合成法として工業化学への応用が十分に可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した研究計画は当初の想定を超える速さで実現している。残る課題もすでに検討を進めているので、期間内に十分に達成できると考えている。それ以上に、計画段階では予想しえなかった成果、金属触媒と不飽和結合との協働作用による安定化学結合活性化も見つけていて、その進展も十分に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
アルケンへのヒドロアリール化反応の一般化と応用、金属と不飽和結合の協働作用によるsp^3C-H活性化、アミノシアノ化反応を重点的に研究し、並行してアルケンへの分子間カルボシアノ化反応、アルキニルアミノ基を有するアレーンC-H結合の活性化、カルボアシル化,アミノアシル化,アルコキシアシル化反応を残る期間で調べる。当初計画から少々変更すべき点が生じたが、遷移金属触媒と不飽和結合との協働作用による安定結合活性化を新たに課題として追加できることになった。
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Research Products
(13 results)