2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21225007
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大野 弘幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00176968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 暢文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60313293)
森島 圭祐 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60359114)
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Keywords | 高極性イオン液体 / 疎水性 / バイオマス / 刺激応答性 |
Research Abstract |
バイオサイエンスに有益なイオン液体の設計、特に含水したバイオマスからセルロースを効率的に抽出する高極性かつ疎水性イオン液体を発展させるとともに、バイオマスから様々な生体高分子を同一バッチで処理するシステムの構築を目標として研究を推進させた。 以前に報告したセルロースを室温で溶解するイオン液体は、含水量が増えるとそのセルロース溶解能が著しく低下した。この問題を解決するために、イオン液体のさらなる機能化に挑戦した。イオン液体と水の親和性を温度、pH、CO2バブルなどの外部刺激で制御することに成功した。これらのイオン液体/水混合系は、外部刺激により相溶・相分離を制御できることから、低含水率のイオン液体相に抽出したセルロースを酵素などで加水分解し、水相から加水分解に必要な水分子を供給することが可能である。特に、温度に応答して相状態が変化するイオン液体/水混合系は、相転移温度を室温付近に設定すれば、省エネルギーシステムの構築に貢献できる。そこで、一連の疎水性イオン液体及び温度に応答して水との相状態が変化するイオン液体に対して、水と混合後のイオン液体相の含水率を比較した。それらの結果を注意深く解析することで、このような相転移を示すイオン液体に求められる要件を整理し、イオン液体をデザインするための指針を確立した。 含水したバイオマスを溶解する強力な溶剤の開発にも着手した。ある種のヒドロキシルアニオンを有するホスホニウム塩が40wt%含水状態でも、室温で20wt%程のセルロースを溶解できることを見出した。また、セットアップが完了したイオン液体を移動相とするHPLC(HPILC)などを用いて解析することで、溶解過程でセルロースの誘導体化、分解が生じていないことも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本基盤研究が開始された時に計画されていた実験はほぼ着実に実施され、期待された成果が得られている。特に、含水系のバイオマスを処理するためのイオン液体の発展は著しく、ヒドロキシアニオンを構成イオンとするイオン液体/水混合系が強力なセルロース溶剤となりうることが明らかになった。イオン液体/水混合系の相状態の制御についても、構成イオンの構造と混合系の相状態の相関が徐々に整理されつつある。セットアップが完了したイオン液体を移動相とするHPLC(HPILC)の稼働状況も順調で、開発したイオン液体/水混合系で抽出した高分子を解析するための強力なツールとして働いている。
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Strategy for Future Research Activity |
含水系バイオマスからグルコースなどを生産し、バイオ燃料電池などでエネルギー変換するシステムの発展を目指す。 今年度の研究より含水系バイオマスからセルロースを効率的に抽出することに成功した。次なる課題はこのセルロースをイオン液体/水混合系中で加水分解し、グルコースを生産することである。加水分解を行う触媒としては酵素を第一候補に挙げているが、無機や有機酸などの触媒も用いる予定である。イオン液体中で酵素を働かせることは非常にタフな課題ではあるが、申請時に予想していたよりも水の量が多い状態でセルロースを溶解できたことを大いに利用する。 我々は昨年度に、イオン液体の水和状態を物理化学的に解析した結果、ある種の中間水の存在がタンパク質を安定に溶解できる要因であることを示している。“高極性”、“疎水性”“酵素の安定性”の性質をすべて兼ね揃えたイオン液体を開発するのは非常に難しいが、これまでの知見を利用し、異なる性質を有するイオン液体を混合することも視野に入れて、バイオマスを効率的に処理する課題の開発にチャレンジする。
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Research Products
(82 results)