2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21225007
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大野 弘幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00176968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 暢文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60313293)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 疎水性イオン液体 / バイオ燃料電池 / 酵素電極 / 補酵素 / 心筋細胞 / 心拍挙動 |
Research Abstract |
バイオサイエンスに有益なイオン液体/水混合系の研究をさらに展開し、自由に系を設計できるような知見をまとめた。 一方、タンパク質や細胞などの生体分子が安定に働くことのできる機能場としてのイオン液体の構築を目標とした研究も進展させた。本申請研究の重点研究の一つであるバイオ燃料電池の電解質にイオン液体を用いることができれば、電解質溶液の揮発やバイオコンタミネーションの抑制、さらにはセルロースなどの難溶性基質にも対応するシステムの構築が期待できる。そこで我々は、NAD(H)を補酵素とするアルコール脱水素酵素(ADH)をモデルとし、アノードの特性評価を行った。ADH固定化電極の上にNAD(H)をゼラチンで固定したアノードを作製し、エタノールを基質として電気化学特性を検討した。種々のイオン液体を比較した結果、疎水性イオン液体である[C4mim][Tf2N]を用いると良好な電流値が得られた。さらに、水系で問題となっていた補酵素の溶出も抑止できた。カソード電極の検討としては、マルチ銅酸化酵素であるBilirubin oxidaseをモデルタンパク質とし、金ナノ粒子に固定化後、電気化学的評価を行った。その結果、酸素の4電子還元に由来する電流ピークを観測できた。 一方、イオン液体を用いた心筋細胞の保護も試みた。心筋細胞は付着性細胞であるため、ディッシュ底での心拍挙動を阻止しない低密度疎水性イオン液体を利用した。いくつかの疎水性イオン液体を検討した結果、アニオンにアミノ酸構造を含むか、長鎖アルキル鎖を含むイオン液体を用いた場合に、細胞表面の水の拡散・蒸発を防ぐことができ、心拍挙動が観測できた。この系に電位を印加したところ、流動パラフィンなどでは観測されなかった、印加パルスに呼応した心拍挙動が確認できた。長期の機能維持は今後の課題であるが、細胞保護剤としてのイオン液体の可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本基盤研究が開始された時に提案した計画実験はほぼ着実に実施され、期待された成果が得られている。イオン液体を電解質溶液とするバイオ燃料電池や、バイオマイクロアクチュエーターの設計に有効なイオン液体の構造や特性の知見が整理されつつある。バイオ燃料電池の電極には適度な疎水性を有するイオン液体が有効であり、エタノールから電気エネルギーを取り出すことに成功した。また、イオン液体への溶解度の違いを利用して、補酵素を電極近傍に固定できることを見出した。心筋細胞などの付着性細胞には低密度の疎水性イオン液体が細胞表面の水の拡散・蒸発を抑制するのに効果的であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに明らかにしたイオン液体の機能と構造との相関関係を利用し、バイオサイエンスに貢献するイオン液体の研究を総合的に発展させる。 セルロースなどのバイオエネルギー源を化学エネルギーに変換できる系の研究をさらに進める。そのためのイオン液体の設計指針を確立する。 タンパク質の溶媒としてのイオン液体の研究もさらに進め、本研究の目的に合った成果を出すと共に、広くバイオサイエンス分野に使える新しい溶媒としての評価を行い、従来の緩衝水溶液よりも扱いやすく、タンパク質等の寿命を長くできる溶媒の設計につなげるとともに、水系では不可能な展開にも挑戦する。さらにはグルコースおよびオリゴ糖を酸化し、電気化学的に電子を獲得するシステムの開発を急ぐ。そのために、バイオ燃料電池用の酵素群のイオン液体中での機能評価をこれまでと同様精力的に実施する。
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Research Products
(90 results)