Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 正宏 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80355932)
大瀧 雅寛 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (70272367)
礒田 博子 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (00375429)
牛島 健 北海道大学, 大学院・工学研究院, 特任助教 (20586721)
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Research Abstract |
(1)要素研究-1 し尿処理:病原微生物の不活化に対するマルチバリアとしてコンポスト取り出し時の石灰添加を検討した結果,特定酵素や細胞外膜への損傷など致命的な損傷をおこすことでできることが分かった.尿だめに布を浸し,その布に自然換気にて通風する方法によって,水分を蒸発させ,尿を濃縮するシステムにおいて,濃縮された尿中では尿素の加水分解が抑制され,アンモニア態窒素成分の揮発も抑制できることが示された.尿中窒素から緩効性肥料を作成する研究では,反応条件と窒素回収率の関係を得た.リン回収では,Ca量により生成結晶のDCPDかHAPとなることが示された. (2)要素研究-2 雑排水処理再利用技術:処理装置の必要長さを処理水の作物成長阻害性から求めることが可能となり,処理水LAS濃度目標値を得た.高速沈降性藻類池では藻類集積に必要なSRT値を得た. (3)要素研究-3 微量汚染物質モニタリング:LASのヒト腸管上皮細胞であるCaco-2に及ぼす影響やLASに対するバイオマーカーの探索を行った結果10種のバイオマーカーを得た.これらはタイト結合の不可逆的な崩壊やバリアー機能促進,アポトーシス誘導,酸化ストレスに関わるタンパク質であった.バイオマーカーを細胞種,汚染源,バイオマーカー種による分類を行い,環境リスク評価に対するバイオマーカーのデータベース構築を行った. (4)要素研究-4 衛生学的管理手法:核酸修飾剤のPMA(PropidiumMonoazide)を,従来の寒天培地培養法と組み合わせることによって,膜損傷細菌の検出感度を大幅に向上させると共に,定量的な評価が可能になった.病原細菌や病原ウイルスに致命的な損傷を与えつつ,不活化速度を促進させる方法としては,pHを高くすることが有効であることがより確認された. (5)実証実験:途上国スラムモデル:インドネシアにおいて,コンポスト型トイレを試作し,運転を開始した.途上国農村モデル:農家における物質,value chainを調査し,適切なサニテーションシステムとその周辺システムの関係を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は「混ぜない・集めない」というコンセプトのもとで,途上国農村モデル,途上国スラムモデル,日本里山モデルを提唱し,公衆衛生学,衛生工学に裏打ちされた工学技術と科学的知見の蓄積による本システムの理念の体系化,システムを支える要素技術の合理的設計法,システム評価法の基盤の確立である.要素技術の合理的設計法,モニタリング基盤の確立に関して,当初目標としてきた様々の知見を既に得ることができてきている.すなわち,要素技術の組み合わせとモニタリング法によるシステム化の段階に達している.また,提唱しているモデルの実装にむけた導入戦略の検討の過程から,システム理念の体系化に知見を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
残りの2年間は要素技術を組み合わせるシステム化に展開する.また,実証研究からのフィードバックを得る.また,尿の処理システムに関しては,技術の理論的基盤が確立したので,実際の尿への適用にあたっての課題に研究の焦点を移す.新しい評価システムの構築では作成済みのHSP47及びHSP90β遺伝子導入細胞を用いて複数種類の汚染物質などによる相加的な細胞毒性・ストレスを評価できるかについて検証を行い,コンポストや雑排水処理水のアッセイ系を確立する.
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