2010 Fiscal Year Annual Research Report
極低温電子顕微鏡による細菌べん毛モーターと蛋白質輸送装置の像構造解析
Project/Area Number |
21227006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
難波 啓一 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授 (30346142)
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Keywords | 細菌 / 蛋白質 / ナノバイオ / ナノマシン / 分子モーター |
Research Abstract |
本研究の目的は、回転モーターでありべん毛蛋白質輸送装置でもあるべん毛基部体の動作機構の解明のため、未だに多くが不明な基部体構成蛋白質間の相互作用形態を明らかにすることである。機能状態では基部体に弱く結合し、あるいは結合解離を繰り返してさまざまな機能を発現するが、基部体の単離精製によって解離するためその相互作用部位や形態がまったく不明な蛋白質が複数存在し、動作機構の解明を妨げている。そういった蛋白質あるいはその安定結合変異体を大量発現系から単離精製し、別に単離精製した基部体に付加してより大きな複合体を再構成し、極低温電子顕微鏡による単粒子像解析法やトモグラフィー方によりその立体構造を解析することにより、基部体と各蛋白質分子の相互作用形態を詳細に解析して、トルク発生、蛋白質輸送、自己構築制御などのしくみの解明を目指す。 本年度は、べん毛構造の自己構築に必須なべん毛蛋白質輸送装置の構成蛋白質のうち、細胞質内で輸送基質を結合し、6つの膜貫通型蛋白質からなる輸送ゲートとの結合解離を繰り返すことで高い輸送効率を支える3つの細胞質性蛋白質FliH,FliI,FliJについて研究を進め、FliI-FliJの特異的な相互作用を解明した。2007年に解明したFliIの結晶構造はF_1-ATPaseのα/βサブユニットとの意外なほど高い相同性を示したが、本年度にFliJの結晶構造が解けて、γサブユニットとそっくりであるという予想外の結果を得た。さらに、FliIの形成する六量体リング構造とFliJの相互作用を電子顕微鏡で観察したところ、細長いコイルドコイル構造のFliJがFliI六量体リングの中心に突き刺さって結合するようすが、F_1-ATPaseのα_3β_3γ複合体とほぼそっくりであることが明らかとなった。輸送ゲートはプロトン駆動力をエネルギー源とし、輸送基質蛋白質を結合したFliH-I-J複合体がこのゲートに結合解離を繰り返すことで高効率の蛋白質輸送を行うことは2008年に解明しており、それを考慮すると、ゲートを含む輸送装置全体の構造がF_oF_1-ATP合成酵素のそれとそっくりであるという、遺伝学的にも極めて興味深い発見につながった。
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Research Products
(71 results)