2012 Fiscal Year Annual Research Report
極低温電子顕微鏡による細菌べん毛モーターと蛋白質輸送装置の像構造解析
Project/Area Number |
21227006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
難波 啓一 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (30346142)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 細菌 / 蛋白質 / ナノバイオ / ナノマシン / 分子モーター |
Research Abstract |
細菌べん毛は回転モーターとらせん繊維型プロペラなどで構成される超分子ナノマシンである。本研究は、回転モーターでタンパク質輸送装置でもあるべん毛基部体で、未だに多くが不明な構成タンパク質の配置と相互作用を解明し、基部体の動作機構を明らかにするのが目的である。 加速電圧300 kVの電子線には直径1ミクロンのサルモネラ菌は厚すぎて透過しづらいため、クライオ電子線トモグラフィーの解像度は10 nm以下に留まり、基部体の詳細な構造を見ることができない。しかし、FtsZの大量発現により直径0.4ミクロン程のミニ細胞を効率よく作成する条件を確立したので、分解能を4 nm程度にまで向上させることが可能になった。ミニ細胞も1~2本のべん毛を持ち、野生型に近い運動能を持つため、完全な機能状態でべん毛基部体の立体構造観察が可能になり、実際に固定子や輸送装置の結合の様子を観察することに成功した。また、サルモネラ菌の10倍高速で泳ぐ磁性細菌MO-1の秘密が、水平連結六方七連という特殊なべん毛モーターの構造にあることもトモグラフィーにより解明した。 一方で、タンパク質輸送効率を上げる FliH/I、固定子でプロトンチャネルでもあるMotA/BやMotPS、輸送ゲートを構成する膜タンパク質などを大量共発現系から精製し、X線結晶解析やクライオ電子顕微鏡像解析により構造解析を進めた。FliH/I複合体については結晶構造が、FliPのペリプラズムドメインについては良好な結晶が得られた。相同性の高いフックとロッドを構成するFlgEとFlgGのアミノ酸配列比較で、FlgGにしか存在しない配列をFlgEに挿入することで、フックをロッドのように真っ直ぐで固い構造にすることにも成功。べん毛軸構造の各部で必要に応じて異なる力学的性質を実現するメカニズムを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
べん毛基部体の立体構造を完全な機能状態で観察したと自信を持って言えるのは、ミニ細胞の遺伝的背景の工夫により、その大半がべん毛を持ち野生型に近い運動能を持つ状態にできたことによる。数多くの凍結ミニ細胞のクライオ電子線トモグラムを効率よく収集するための凍結グリッドの工夫と、クライオ電顕像をほぼ自動で収集し解析するFEI社製のクライオ電子顕微鏡(Titan Krios)が安定稼働していることも大きく貢献した。それにより、各トモグラムから基部体の立体像を切り出し、数多くを整列させて平均化することで立体像の分解能が向上し、その結果、まだ大まかにではあるが固定子や輸送装置の配置と構造を明らかにすることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も凍結ミニ細胞のクライオ電子線トモグラムを一層数多く収集して平均化することにより、べん毛基部体の立体像の分解能を格段に向上させ、また様々なべん毛タンパク質を欠失あるいは改変した変異株のミニ細胞でも同様に基部体の立体構造を解析することで固定子や輸送装置タンパク質の配置や相互作用を明らかにし、トルク発生やべん毛タンパク質輸送に関わるタンパク質の相互作用と動きを明らかにする。また、大量発現して精製した基部体構成タンパク質複合体についても、X線結晶構造解析やクライオ電顕単粒子像解析により部分構造の構造解析を進める。 一方で、光学ナノ計測法によるモーターの回転計測やpHイメージングによるさまざまな変異株の機能解析も並行して進め、構造解析から得られた情報と統合することによりトルク発生やタンパク質輸送のメカニズムを明らかにする。
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Research Products
(64 results)