2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21229008
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
谷内 一郎 独立行政法人理化学研究所, 免疫転写制御研究グループ, グループディレクター (20284573)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | T細胞 / 転写因子 / 核内分化プログラム / サイレンサー / 可塑性 / 系列決定 / クロマチン / γδT細胞 |
Research Abstract |
T細胞は免疫応答を担うと共にその調節を行う重要な細胞群であり、異なる機能を持つ幾つかの細胞亜群から構成される。T細胞の分化バランスの異常によって種々の免疫疾患が誘発されることから、免疫疾患の病態を理解し、医療に応用可能なT細胞分化制御技術を開発することは医学・免疫学の重要な課題である。本研究課題では、T細胞の分化を制御する転写因子ネットワークの解明を目的に研究を遂行した。 平成24年度は胸腺内でのヘルパー/キラー系列への分化運命制御において最重要と位置づけられるThPOK遺伝子の発現制御機構の解明を中心に研究を行った。特にThPOK遺伝子内の制御領域の相互作用を解析するため、複数の変異、或は制御領域の位置関係を改変する変異を導入した。その結果局所クロマチン構造の変化がThPOK遺伝子の発現調節スイッチとして機能していることを解明した。この制御領域間相互作用の調節には、サイレンサー結合因子として新規に同定したBcl11b転写因子が重要であることも見出した。 またThPOK遺伝子のエピジェネティック制御に関して検討を加え、サイレンサー活性の増強によりヘルパー系列でもサイレンサー非依存的に発現抑制状態が維持されるエピジェネティック遺伝子サイレンシングが確立されることを発見し、ヘルパー系列への運命決定は限られた期間に行なわれる必要があることを示し、国際雑誌「EMBO Journal」にその成果を発表した。 次に恒常的に抗原に暴露される腸管では、一部のヘルパーT細胞がRunx3遺伝子の発現上昇とThPOK遺伝子の発現低下により、CD8を発現するキラー様T細胞にリプログラムされることを見出し、胸腺内での運命決定後にもキラーT細胞への分化可塑性が維持されるという従来の定説を覆す画期的な成果を国際雑誌「Nature Immunology」に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ThPOK遺伝子の発現制御によるT細胞分化を制御機構に関して、論文発表を含め画期的な成果を得ていると思われるから。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝学的な解析から局所でのクロマチン構造変化が重要である知見を得たが、今後は生化学・分子生物学・イメージング技術を取り入れた局所クロマチン構造解析法を樹立していく必要がある。また転写因子のゲノム上の結合部位の同定、翻訳後修飾を含むそれら因子の機能制御機構を系統的に解析する手法の確立も重要と考えている。に移行して研究を進めることが必要であり、またイメージング技術を取り入れた解析法も導入して行きたい。
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Research Products
(9 results)