2012 Fiscal Year Annual Research Report
天疱瘡抗原に対する中枢性、末梢性免疫寛容機構の解明
Project/Area Number |
21229014
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
天谷 雅行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90212563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永尾 圭介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40286521)
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70335256)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫寛容 / 自己免疫 / モデルマウス / 天疱瘡 / 樹状細胞 / デスモグレイン / 気管支炎 |
Research Abstract |
本研究では、自己免疫性皮膚疾患である尋常性天疱瘡(PV)の標的抗原、デスモグレイン3(Dsg3)に対する中枢性および末梢性免疫寛容機構獲得機序を解析し、自己反応性T細胞の関与する病態を明らかにするとともに、免疫寛容に関わる皮膚樹状細胞の役割、および胸腺に代わる免疫制御臓器としての皮膚の新たな機能を解明することを目的としている。平成24年度には、中枢性・末梢性免疫寛容を検討するために、Dsg3-/-マウスあるいは野生型マウスの胸腺をヌードマウスに移植し、Dsg3-TCR H1 Tg-Rag2-/-(Dsg3-H1R)マウスから骨髄移植を行い、胸腺、末梢におけるDsg3の発現の有無がDsg3TCR T細胞に及ぼす影響を検討した。Dsg3を発現しない胸腺を移植されたヌードマウスにおいては、 Dsg3-H1R T細胞による皮膚障害を認めず、 Dsg3-H1R T細胞は胸腺において除去されないものの、末梢においてほぼ消失しており、末梢免疫寛容機構の存在が確認された。また、皮膚移植を用いた腫瘍随伴性天疱瘡(PNP)モデルマウスは、従来のPVモデルマウスより生存率が有意に低下しているが、皮膚、口腔粘膜のみならず、肺組織にT細胞浸潤を認めることが明らかにされた。PNP患者において見られる致死的な閉塞性細気管支炎を擬似しているものと考えられた。正常肺組織においては発現の認められないDsg3が、肺上皮傷害後に起こる扁平上皮化生において異所性発現をすることを確認し、Dsg3反応性T細胞が肺障害を誘導する可能性が示された。抗原特異的な自己免疫疾患において、複数の臓器が障害される免疫学的機序の一端が解明されたことになる。さらに、毛嚢は外的ストレスの免疫センサーとなっており、毛嚢の異なる部位が異なるケモカインを発現し、樹状細胞などの白血球の皮膚への遊走を制御していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究計画として、下記の3課題が予定され、それぞれの課題においておおむね順調な成果をあげている。一部、当初の予定以上の成果をあげて進展しているものもある。 1)Dsg3反応性T細胞に対する中枢性、末梢性免疫寛容機構の解明 Dsg3-/-マウスあるいは野生型マウスより胸腺移植したヌードマウスに、 Dsg3-H1Rマウスより骨髄移植を行い、Dsg3-H1R T細胞に対する末梢免疫寛容が存在することを実証することができ、そのメカニズムを詳細に解析する系を確立することができた。次年度は、分子レベルにおいては、Aire, PD-1/PD-L1などの分子を、細胞レベルにおいては樹状細胞各種サブセットの関与を検討する予定であり、最終年度に向けて着実に成果をあげている。 2)Dsg3反応性T細胞により誘導される病態の検討 腫瘍随伴性天疱瘡(PNP)モデルマウスを用いて、閉塞性細気管支炎に相当すると思われる肺障害が誘導されることが明らかにされた。PNPにおいて閉塞性細気管支炎は致死的であり、病態不明であるが、皮膚特異的自己免疫疾患において、皮膚抗原に対するT細胞が肺を攻撃し得ることを示す事ができ、臓器を超えて自己免疫が起こる機序の一端を解明した意義は大きい。また、Dsg3-H1 T細胞をin vitroの培養系においてTh17型へシフトした後に養子移植すると、強い好中球浸潤を伴う乾癬に類似した皮膚炎を誘導することを示した。尋常性乾癬の病態として自己免疫が関与している可能性が示され、その詳細な分子機構を現在解析している。 3)抗体産生および免疫寛容における樹状細胞の役割の解明 本研究施行中に、表皮樹状細胞であるランゲルハンスは、毛嚢を介して表皮に再構築されることを発見し、毛嚢が外敵ストレスに対する免疫センサーであることを明らかにした。当初予定した計画以上の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Dsg3反応性T細胞に対する中枢性、末梢性免疫寛容機構の解明 これまでの我々の研究から病原性を有するDsg3反応性T細胞は胸腺内のみならず胸腺後の末梢性免疫寛容機序によっても除去されることが示された。末梢性免疫寛容を担う担当細胞および分子を追求する。具体的には,分子としてはPD-1/PD-L1,Aire、細胞としてはランゲルハンス細胞、胸腺外Aire+細胞等の関与を検討する。Aireに関しては, Aire-/-ヌードマウスを、ランゲルハンス細胞に関しては、langerin-DTAヌードマウスを、胸腺外Aire+細胞に関しては、Aire-DTRヌードマウスを、それぞれ作成し、検討する。 2)Dsg3反応性T細胞により誘導される病態の検討 胸腺での負の選択を免れたDsg3反応性CD4+T細胞が末梢組織で誘導する病態を検討する。IL-17-/-マウス、IFN-γ-/-マウスと交配させることにより、Th1、Th17で中心的役割を果たすサイトカインと皮膚炎の関係につき検討する。また、皮膚炎を起こしている皮膚より、T細胞、ケラチノサイトを分離し、それらのmRNAの発現を検討し、皮膚炎に関与するサイトカイン、ケモカインについて検討する。 3)抗体産生および免疫寛容における樹状細胞の役割の解明 我々のこれまでの研究成果により、表皮樹状細胞であるランゲルハンス細胞が外来抗原に対してTh2型の液性免疫を担うことが確立された。ランゲルハンス細胞が自己抗原を獲得した後抗原提示を行い、免疫応答を制御しているかを検討する。ランゲルハンス細胞がDsg3を提示しうる場合は、Langerin-CreマウスをATG5/7-LoxPマウスと交配し、自己抗原をMHC class IIの範疇で抗原提示するためにオートファジー機構の関与を解析する。
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[Journal Article] Autoimmune reactivity against precursor form of desmoglein 1 in healthy Tunisians in the area of endemic pemphigus foliaceus2013
Author(s)
Toumi A, Saleh MA, Yamagami J, Abida O, Kallel M, Masmoudi A, Makni S, Turki H, Hachiya T, Kuroda K, Stanley JR, Masmoudi H, Amagai M
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Journal Title
J Dermatol Sci
Volume: 70(1)
Pages: 19-25
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Pemphigus autoantibodies generated through somatic mutations target the desmoglein-3 cis-interface2012
Author(s)
Di Zenzo G, Di Lullo G, Corti D, Calabresi V, Sinistro A, Vanzetta F, Didona B, Cianchini G, Hertl M, Eming R, Amagai M, Ohyama B, Hashimoto T, Sloostra J, Sallusto F, Zambruno G, Lanzavecchia A
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Journal Title
J Clin Invest
Volume: 122(10)
Pages: 3781-3790
DOI
Peer Reviewed
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