2009 Fiscal Year Annual Research Report
歴史情報学に基づく明治期社会モデルの研究-写真資料を用いた華族社会構造の解析-
Project/Area Number |
21240023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 章 The University of Tokyo, 大学院・情報学環, 教授 (10208704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉見 俊哉 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (40201040)
佐藤 健二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50162425)
五百旗頭 薫 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40282537)
添野 勉 東京大学, 大学院・情報学環, 助教 (20436512)
研谷 紀夫 東京大学, 大学院・情報学環, 助教 (00466830)
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Keywords | 歴史情報 / 歴史写真 / 華族 / 名刺判写真 / 集合写真 |
Research Abstract |
初年度である2009年度は、特に旧薩摩藩出身者と旧長州藩出身者の華族写真を中心に、写真の所在調査、被写体情報調査、写真に関する文書や口伝等(文字・言語情報)の調査を行った(被写体情報や文字・言語情報はともに写真資料の歴史情報である)。今年度の調査対象を旧薩摩藩出身者と旧長州藩出身者に限定したのは、予備調査の段階で、明治期の華族(特に新華族)は薩摩・長州の二大藩閥に実権を握られていたことが今までに閲覧した集合写真や記念写真の上からも予測できた為であり、本科研費研究の期間や人員の規模を考慮しつつ、研究の効率性を考え、薩摩・長州の二大藩閥に絞ったほうが得策だろうと結論付けたからである。写真資料の現存状況や子孫へのアプローチのし易さを考慮して、薩摩閥の大久保利通家所蔵写真、長州閥の伊藤博文家所蔵写真、さらには二大藩閥と関係の深かった旧公家・旧大名家の岩倉具視家所蔵写真と旧福井藩松平家所蔵写真を重点調査対象とし、現存写真の概要調査とデジタル化作業を推進した。また、後に華族となる薩摩藩・長州藩の有力藩士や公家・諸大名の子弟が数多く留学した米国ニュージャージー州立ラトガース大学(最初期の日本人留学先)の、日本人留学生が被写体となっている歴史写真のコレクションを調査し、同大学に残された名刺判写真から、華族交流の端緒とも言える最初期留学生の共同体を分析した。今年度の調査の成果として上げられるものは、名刺判写真とともに各家に残されている、集合写真の存在確認とその意味性解明への手掛かりの発見である。当時の政治家、財界人、軍人などが写るそれらの集合写真には各家の当主が写るのはもちろん、当主と当主が属する共同体との関係性、また人物同士の心情的繋がりが人物と人物との物理的位置関係から推測できる可能性があることが写真資料の調査から顕かとなった。ある共同体内における人的交流の広がりは名刺判写真の種類と残存数の調査、および集合写真のメンバー構成と写真に写る人物達の立ち位置の調査とを合わせることで、より深層的な華族内の人間関係や華族共同体の有り様の解明が今後の研究から予想される。
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Research Products
(4 results)