2011 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞の情報発信制御メカニズムと脳の可塑性に関する研究
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21240034
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小泉 修一 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (10280752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠崎 陽一 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 講師 (10443772)
柴田 圭輔 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 助教 (50580411)
森山 芳則 岡山大学, 大学院・医歯薬総合研究科, 教授 (10150658)
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Keywords | ATP / 開口放出 / ミクログリア / アストロサイト / トランスポーター / グリア細胞 |
Research Abstract |
これまで「静かな脳細胞」と考えられていたグリア細胞の化学情報の発信機能、特にATPの化学情報発信メカニズムとその生理学・病態生理学的意義の解明を行った。ATP放出は、特に、本分担研究者森山らが発見したVNUT(vesicular nucleotide transporter)に注目し、開口放出に注目して解析を行った。 前年までに、アストロサイトがVNUTを介してATPを細胞内小胞に取り込むこと、そのATP含有小胞からカルシウム依存的にATPが放出されることを明らかとしてきた。本年は、以下の点を明らかとした。 1.ミクログリアにもVNUT mRNA及び蛋白質が存在した。 2.ミクログリアからのATP放出は、カルシウム依存的であった。 3.RNA干渉法によるVNUTノックダウンにより、ミクログリアのATP放出能は抑制された。 4.開口放出に必須のSNARE蛋白を抑制することにより、ミクログリアのATPの放出は抑制された。 5.アストロサイトのATP開口放出は、シナプス伝達のダイナミックな抑制性制御に必須であった。 6.VNUT欠損動物が完成した。 7.細胞種・時期依存的にVNUT発現をON/OFFできる遺伝子改変動物の作成が最終段階となった。 以上、アストロサイトだけでなく、ミクログリアからのATP放出がカルシウム依存的かつVNUT依存的である、ことが明らかとなった。これは、グリア細胞の化学情報発信能が、高度に制御された開口放出であることを示唆するものであり、グリア細胞の積極的な情報発信が脳機能で重要な役割を果たしていることを強く示唆するものである。さらに、アストロサイトからのATP開口放出は、シナプス伝達制御に必須であった。今後は、遺伝子欠損動物を用い、これらの生理・病態生理学的意義の解明を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もう一方のグリア細胞である、ミクログリアのATP放出能についてもVNUTとの関連性で明らかとすることができた。また、VNUT欠損動物(VNUT-KO)の作成・繁殖に成功したことは、大きな進展であった。さらに、細胞種・時期特異的にVNUTの発現をON/OFFできるコンディショナルVNUT-KO動物の作成の作成も最終段階に来た。これらの基盤技術・知見が蓄積されたために、研究の進展のさらなる加速が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるため、これまで行りてきたVNUTに注目したATPの放出の有無及び、その調節メカニズム、さらにそれらが脳及び他の組織・器官の機能に与える影響の解析を精査する。特に本年度作成した遺伝子改変動物を用いて解析を加速される。細胞レベルだけではなく、VNUT-KOを用いたin vivoの表現型の解析により、その生理的及び病態生理的意義が解明されることが期待出来る。さらに、今後は、細胞種・時期特異的にVNUTの発現をON/OFFできることから、より詳細な生理・病態生理機能の解析に繋がることが期待出来る。
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Research Products
(31 results)