2012 Fiscal Year Annual Research Report
人工林における間伐が土壌有機物の動態および森林による炭素吸収に及ぼす影響
Project/Area Number |
21241002
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
東 照雄 筑波大学, 副学長 (20094170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上條 隆志 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10301079)
田村 憲司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70211373)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 人工林の間伐 / 土壌有機物 / 土壌呼吸量 / 森林の炭素吸収 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
現在、農林水産省は、わが国の森林による炭素吸収に基づく二酸化炭素排出量削減を促進するため、管理が行き届かない人工林の330万haに及ぶ間伐を実施している。しかし、既存の研究によれば、間伐によって、主に地温の上昇などにより、土壌呼吸量の増加が懸念されている。 本研究では、平成23年9月にカラマツ林、10月にスギ・ヒノキ人工林において間伐を行った(カラマツ林では材積の約40%、他の2つの人工林では約25%の間伐を行い、間伐材は、幹・枝と葉部を分けて現場に野積みした)。その際、気象条件の年々変動を考慮して、研究対象コドラートを2つの区画に分け、間伐区と対照区(非間伐区)を設けた。そして、間伐の直後から平成24年度3月まで、両区における土壌呼吸量・地温の継続的な測定を月に1回の頻度で行ってきた。 本年度の研究計画に従って、各人工林での間伐前と間伐後の土壌呼吸量を中心にした炭素動態に関する比較を行った。その結果、現時点では、カラマツ林、スギ林では、間伐区と対照区(非間伐区)との間で、顕著な土壌呼吸量の差異は認められていないが、ヒノキ林では、対照区と比較して、間伐区での地温上昇とともに、土壌呼吸量の上昇がより明確に認められた。なお、3つの人工林とも、土壌水分量、土壌の溶存有機物量などの土壌呼吸量への有意な影響は認められなかった。カラマツ林では、地形的要因について解析を行ったが、土壌呼吸量への影響は有意ではなかった。 なお、今年度に予定した間伐による土壌有機物の変化(土壌炭素・窒素量変化、NMR分析による化学構造変化および土壌表面の堆積有機物層の変化)に関しては、間伐後の時間経過が1年半と短期間であることから、次年度に行う方がより明確な成果が得られると判断して、研究の一部しか行わなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度9月と10月に、研究対象地のカラマツ・スギ・ヒノキ人工林において間伐を行い、その後の土壌呼吸量・地温の測定が順調に経過しているが、本年度の研究実施計画に記載した間伐による土壌有機物の変化に関する研究の進捗状況が計画よりも遅れているために③の自己評価をした。この点については、本研究の最終年度である平成25年度に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も、間伐後の土壌呼吸量・地温および胸高直径等について、間伐区と対照区(非間伐区)と比較しながら、測定を継続し、間伐後の年間の炭素収支を算出し、間伐前と比較することとしている。なお、土壌有機物の変化については、その存在量、化学構造(NMR測定)、および土壌表面の堆積有機物層について、さらに研究を推進する予定である。カラマツ、スギ、ヒノキ林における間伐による間伐後2年間の土壌呼吸量及び炭素収支の変化を明らかにする。
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