2011 Fiscal Year Annual Research Report
液体マイクロビーム分光法による生体分子系放射線誘起状態の時間発展観測法の開発
Project/Area Number |
21241017
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鵜飼 正敏 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80192508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横谷 明徳 日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (10354987)
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Keywords | DNA放射線損傷 / 化学的損傷修復 / シンクロトロン放射光電子分光 / 電子エネルギー損失分光 / 時間相関分光 / 液体分子線 / 超励起分子のダイナミクス / 水素結合ネットワーク |
Research Abstract |
DNAの放射線損傷の修復過程には、修復酵素タンパク質による"酵素修復"とともに、放射線誘起構造変化に対する細胞系のより迅速な自己組織的修復である"化学修復"の存在が考えられているが、その詳細はまったく知られていない。"化学修復"は放射線照射前の安定状態への回帰であり、DNA損傷の定着とは択一的な熱力学的緩和過程であるため、"化学修復"の時間発展的理解は、そのままDNA損傷の発生メカニズムの理解につながる。本研究では、この放射線照射直後のDNA分子の異常構造(非平衡状態)の発生と、その熱力学的緩和過程を明らかにするための分光学的研究方法の開発を目的とする。生体分子への溶媒和により規定された構造に特有な放射線誘起構造変化をサイト選択的に観測するために、現有の液体分子線・シンクロトロン放射光電子分光法を発展させ、相補的に新規の高速電子線エネルギー損失分光法による励起とエネルギー損失に後続して誘起される反応を時間発展的に観測するための分光学的研究法を開発する。 以上の目的と計画にしたがい、本年度は前年度までに装置製作と付随する電源系・電気計測系を整備により概要を完成した高速電子線エネルギー損失分光装置の運転・調整、ならびに改造によりシステムを完成し運転手順を確立した。一方、SPring-8既設の液体分子線光電子分光装置に対しても電子分光装置と計測系に対する整備を行った。また、これらハード面の整備に並行して、ヌクレオチドやATPなど、DNA構成分子やその誘導体を含む水溶液試料に対する実験技術を継続的に蓄積し、高速電子線衝撃と軟X線照射を相補的に用いた液体分子線に対する電子分光法を開発した。 以上、交付申請書にもとづき、本年度の研究をほぼ遅滞なく遂行した。
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Research Products
(19 results)