2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ構造中の集団核スピンエンタングルメントを用いた集団量子情報処理
Project/Area Number |
21241024
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遊佐 剛 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40393813)
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Keywords | 量子情報 / ナノ構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナノ構造に存在する核スピンや電子スピン、励起子などの集団量子に対し、量子力学的な測定や操作を行い、通常の量子ビットで用いられている2準位系とは異なる、集団性を生かした量子情報処理の実現を目指すものである。 本年度はまず、試料作成および測定系の立ち上げを中心に研究を進めた。ダイヤモンド中のスピンを集団メディアとして利用するため、単結晶ダイヤモンド合成用CVD装置を用いて試料を作成し、顕微ラマン分光によって品質を評価した。また、集団NVセンターに対して光検出磁気共鳴測定を行った。また、量子ホール系の顕微分光測定を行い、分数量子ホール状態の実空間イメージング及び、顕微分光測定を行って、集団スピンを接続するためのエッジチャネルに関する物性を探索すると共に、v=2/3量子ホール状態の二つの縮退した基底状態によって出現する磁区構造の観察を進めた。 さらに、集団的な量子状態を冷却して、基底状態に落としたとき、局所真空状態からエネルギーを抽出する手法(local passivity breaking)について探索した。特に、量子ホール状態のエッジ状態で現れるカイラルラッティンジャー液体状態にある電荷の真空揺らぎを量子チャネルとして用い、静電結合したゲート電極と増幅器からなる古典チャネルを古典通信路として利用することで、A点の電荷ゆらぎの情報をB点に転送することによって、B点からエネルギーを抽出可能であることを理論的に証明した。これはpassivityの破れが実験的に検証可能であることを示すだけでなく、量子光学では困難な量子プロトコルが、固体中のナノ構造の特性を生かして実現できることを示唆したものとして重要である。
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