2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子・基板界面における磁性分子のスピン物性の開拓と制御に関する研究
Project/Area Number |
21241027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 紀明 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (50252416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 将 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 講師 (80342799)
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Keywords | 表面・界面 / スピン / トンネル効果 / ゼロ磁場分裂 / 磁気異方性 / 吸着 / 近藤効果 |
Research Abstract |
Au(111)、Ag(111)、Cu(111)に吸着した鉄フタロシアニン(FePc)のスピン状態を比較した。Au(111)では、分子スピンが生き残っており、分子スピンと基板電子との相互作用による近藤共鳴状態が観察される。一方、Ag(111)とCu(111)では、近藤共鳴状態が確認されず、バルクではS=1である分子スビンが消失し、S=0に変化したことが推察される。Ag(111)では、二層目にFePc分子特有のゼロ磁場分裂に由来するスペクトル構造が観察される。一層目のスピンが生き残っていると2層目の分子スピンとの相互作用による複雑なスペクトル構造が期待されるが、観測されなかった。このことからも、分子スピンが消失していることが示唆される。また、Au(111)においては、第一原理計算からS=1状態が保持され、これまで考えてきた近藤効果のメカニズムを再考する必要が生じた。また、近藤効果は、分子の吸着サイトにも依存し、オントップでは、幅の広いピークと非常に細いディップからスペクトルが構成されること、ブリッジでは、幅の広いピークのみが観測される。スペクトル形状の詳細な観測と外部磁場によるスペクトル変化、第一原理計算と数値繰り込み群による理論解析により、S=1スピンは、2段階近藤効果で遮蔽されること、また、オントップ種では、軌道自由度とスピン自由度によるSU(4)近藤効果が生じていることを明らかにした。ブリッジでは、スピン自由度のみによるSU(2)近藤効果が起きていると解釈した。この違いは、吸着サイトの対称性により、軌道自由度が生き残るかどうかによっていることが明らかとなった。Au(111)上のFePcにNOを配位させると、電子配置が変わりSU(4)+SU(2)近藤効果からSU(2)近藤効果に変化することを明らかにし、また、外部磁場によるゼーマン効果により近藤ピークが分裂する様子を観測することに成功した。
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Research Products
(19 results)