2012 Fiscal Year Annual Research Report
代替投資を含むポートフォリオの金融リスク管理に関する研究
Project/Area Number |
21241040
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
木島 正明 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (00186222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敬一 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (00381442)
中岡 英隆 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (20516025)
山下 英明 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (30200687)
渡辺 隆裕 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (70220895)
芝田 隆志 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (70372597)
室町 幸雄 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (70514719)
飯星 博邦 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (90381441)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 金融リスク管理 / ファイナンス / 代替投資 / ポートフォリオ効果 / 市場分析 |
Research Abstract |
木島はヨーロピアンタイプのデリバティブ価格を評価するための近似法を開発した.対数正規分布に基づくブラック・ショールズ式では価格誤差が大きいため,近年より複雑なモデルが提案されてきたが,それらを実務で利用するには時間的な制約のため近似解が必要である.そこで木島は極めて精緻な近似法を開発した.室町は証券化商品の価格から将来の大損失シナリオを読み出して評価に組み込む新しい信用リスク計測モデルを考案した.また,取引相手の信用リスクを考慮したエネルギーデリバティブの価格評価モデルを提案した.室町・山下は待ち行列ネットワーク構造モデルの信用リスクへの応用を検討した.田中は経済環境の状態を表す状態変数を規定するパラメータがレジームスイッチする状況における意思決定問題の解法を精緻化した.また,複数の因子を持つ確率ボラティリティモデルにおけるオプション価格を漸近展開を用いて導出した. 中岡は新しいオルタナティブ投資の理論的考察として,出版ビジネスにおける再販制下の返品権・増刷制度をオプションとしてモデル化し,需要の不確実性の市場特性を分析して出版社の意思決定最適化の方法を導いた.芝田は企業の財務指標をリスクを勘案して計測するモデルを構築した.また,企業が銀行よりも情報優位となる非対称情報が企業負債のクレジットスプレッドに及ぼす影響を分析した.さらに,非対称情報が経営者の投資戦略に影響するメカニズムを明らかにし,内外部から資金制約を課された場合の投資戦略や株式価値への影響も分析した. 飯星は大量のパネルデータによるDSGEモデルの推定法を援用し,日本経済の金融政策の効果およびリーマンショックが景気後退に及ぼす金融的・実物的要因の寄与度を推定した.渡辺はマーケットマイクロストラクチャのモデルを離散化して,計算機で分析するために有用となる「離散戦略ゲームにおける均衡の存在条件」について研究した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すべての研究が概ね順調に進展し,その成果は国内外の学会(20件,うち海外開催11件)で発表され,雑誌(13編,うち査読誌8編)に掲載されたほか,本報告書には掲載されていない投稿中の論文も幾つかある.このような良好な進捗の一因は,海外の国際学会への積極的な参加や国内での国際会議の主催により,海外の研究者達との意見交換を効率的に行えたことであろう.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度にあたるので,それぞれの研究を個々に進展させるとともに,既存成果のとりまとめや関連付けにも気を配る.実際,個々の研究テーマは研究開始当初に比べて広がりを見せ,ファイナンス理論をより広範な資産クラスや制度へ適用したモデルが幾つも提案され,それぞれの市場データを用いた市場分析も行われた.また,制度設計(メカニズムデザイン)の基礎となる理論的な研究も進展し,金融実務に有効な新たな近似手法や価格付けモデルも提案された.研究期間の終了に向けて,これまで通りに対象分野を限定せずに研究の拡張を行いながら,既存成果の整理,相互の成果の関連付けなども意識して研究を進める.
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