2012 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖非翻訳RNAを介したクロマチン/染色体機能の制御
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21241046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 邦史 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (90211789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 貴富 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (30451850)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ノンコーディングRNA / ヒストン修飾 / クロマチン / 転写制御 / 翻訳制御 |
Research Abstract |
真核生物で見出された長いノンコーディングRNA(lncRNA)は、発生や分化、ストレス応答などの遺伝子発現制御や、エピジェネティクスの制御に関わると考えられ、近年注目されている。しかし、lncRNAの機能や作用機構などについては多くの謎が残されている。 我々は、単細胞真核生物で高等動物と近いゲノム構造を持つ分裂酵母において、グルコース飢餓時に一過的に発現され、クロマチン構造変化を誘発するlncRNAをfbp1遺伝子領域に見出した(Hirota et al., Nature 2008)。当研究室では、このlncRNAをmlonRNA(metabolic stress-induced long ncRNA)と呼び、その機能解析を行っている。 本年度は、昨年度に引き続き、1)mlonRNAによるクロマチン制御機構、2)mlonRNAの安定性や翻訳制御のしくみ、3)mlonRNAの普遍性の検討、などを実施した。 特に、グルコース飢餓ストレス応答におけるRNA-seq解析及びChIP-seq解析を行い、ゲノムワイドなlncRNAの発現パターンと、ヒストンH3の密度分布や、ヒストンのH3K9アセチル化やH3K4のトリメチル化などのエピゲノム修飾との関係を明らかにした。興味深いことに、H3K9アセチル化を担当すると想定されるヒストンアセチル化酵素Gcn5が、RNAを介してfbp1上流域に結合している証拠を得た。 mlonRNAの安定性制御については、変異体のRNA半減期を測定することで、その機構の概略を明らかにし、論文発表を行った。また、mlonRNAが細胞質に移行しポリソームに結合すること、また翻訳に共役する中で徐々に分解されることなどを明らかにした。加えて、RNA-Seqで明らかになったアンチセンスRNAの動態や局在なども明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画通り進捗している。一部、RNA分解制御に関して、予想外の新たな分解系の存在が明らかになったことや、RNAを介したヒストン修飾酵素の呼び込みなど、計画以上の成果が得られている点がある。その一方で、動物細胞を用いたmlonRNAの探索については、やや遅れがちであり、両者を総合すると「おおむね順調」という判断となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は最終年度であり、研究全体の取りまとめ、論文発表に必要な実験を優先的に実施する。とくに、アンチセンスRNAの役割が重要であること、ヒストン修飾の時空間制御とmlonRNAの関係がわかってきたので、これらの点を重点的に調べる。具体的には、Gcn5のChiP-SeqをRNase処理のありなしで行い、ゲノムワイドでfbp1領域同様の現象が起こっているかを確認する。また、今回新たに示唆された分裂酵母のNo Go decay(NGD)経路やリボゾーム停留の可能性について、NGDに関与する分裂酵母遺伝子を新規に同定し、その変異体を作製し、RNAの半減期や局在を解析して、検証していく。さらに、肝臓細胞などの細胞培養系を利用して、グルコース飢餓時に発現するmlonRNAなどの研究を行う。
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Research Products
(28 results)