2011 Fiscal Year Annual Research Report
物質文化を通じた新たなアフリカ像の構築―国際協働による在来知と外来知の体系的検証
Project/Area Number |
21242034
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉田 憲司 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 教授 (10192808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
慶田 勝彦 熊本大学, 文学部, 教授 (10195620)
亀井 哲也 愛知県立大学, 日本文化学部, 非常勤講師 (60468238)
井関 和代 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (60073285)
川口 幸也 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (30370141)
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Keywords | 国際研究者交流 / 多国籍 / 物質文化 / アフリカ / 文化接触 / 博物館 / 文化人類学 |
Research Abstract |
本研究は、アフリカにおける物質文化の比較研究を通じてアフリカと外部世界の交渉を明らかにし、これまでの認識とは異なる新たなアフリカ像の構築を進めようとするものである。 本年度は、まず研究代表者・吉田憲司がモザンビーク、ザンビアに赴き、モザンビーク内戦後も民間に残された武器を農具と交換し、回収した武器を用いて立体作品を制作する「武器を農具に」というプロジェクトに焦点を当て、その実態とそれを支える在来の製鉄技術の調査を実施した。この結果、同プロジェクトの現代的意義を明らかにするとともに、ザンビアにおいては消滅した製鉄の遺構を発見した。 研究分担者では、慶田勝彦がケニアのミジケンダ社会における物質文化の展開を世界遺産指定との関係で検証し、亀井哲也が南アフリカのンデベレ社会における女性成人儀礼の調査から儀礼用具の秘儀的意味を解明した。川口幸也は北アフリカ・モロッコを調査しサハラを越えた文化交流を跡づけた。また、吉田と川口は、ヨーロッパにもたらされた初期のアフリカ物質文化の調査を実施し、現代の物質文化との比較分析を行なった。その他の研究分担者・連携研究者は国内にて現地との連携により各自の研究の深化を図った。 年度後半には国際シンポジウム「アフリカを展示する-ミュージアムにおける文化の表象・再考」を開催し、海外共同研究者を日本に招聘して、アフリカ各地の物質文化の歴史的・現代的屏開について研究を集約するとともに、それをうけた日本におけるアフリカ文化の表象のありかたを検討した。このシンポジウムでは、本研究のこれまでの研究成果を反映して実現した国立民族学博物館の新たなアフリカ展示の評価を行ない、その国際的位置づけを図ると同時に、アフリカの物質文化の表象の新たな方向性についても指針を示した。 一連の作業により、物質文化を通じた「新たなアフリカ像」の構築に、実質的かつ大幅な進捗を得たと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に新たに取り上げた、上記「武器を農具に」のプロジェクトは、アフリカの物質文化の新たな展開が社会の再生と平和構築に結びつくという動きの試金石となるものであり、本研究の目的である「新たなアフリカ像の構築」に向けての重要な事象を把握したことになる。一方で、当初から想定していた各テーマの調査は着実に成果を得ている。また、国際シンポジウムでは、本研究計画による研究成果のほかに、海外における最新の研究成果を集約することができた。以上により、本研究計画の目的は当初計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究計画の最終年度となる。これまでに得た知見を、日本と海外における新たな「アフリカ像」の提示に実質的に結びつけるため、来年度は、成果の取りまとめと、その提示の実践に向けた取り組みを行なうことになる。
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Research Products
(25 results)