2010 Fiscal Year Annual Research Report
カムランドでの超高感度2重ベータ崩壊探索を目指す検出器の開発計画
Project/Area Number |
21244025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 淳平 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (90171032)
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Keywords | 素粒子実験 / ニュートリノ / カムランド / 2重ベータ崩壊 / 液体シンチレータ |
Research Abstract |
今年度は検出器へのバルーン投入を目指して製作した実寸大のポリエチレンフィルム製のテストバルーンを,深さ8mの大型水槽に沈め,着色液(砂糖水)を注入してそのふるまいを調べた.テストは成功したがバルーンをモニターするカメラと照明の一層の改良が必要であることがわかった.一方,フィルムに含まれる微量の放射性不純物(40K,U,Th)が原料ペレットに含まれる添加剤によることが判明した.メーカーの協力により添加剤のないナイロンフィルム(25um厚)を試作し,これを使って実寸大のバルーンを製作し再度大型水槽での投入試験を行った.テストではバルーンに繋がる注液配管系と張力モニターは本番と同じ装置を用い,バルーンの吊り紐はクリーンナイロン製のベルトを用いた.本番では万一のキセノンの損失を防ぐためまずダミーの液を注入した後,キセノンを溶かした液を注入してダミー液と入れ替える.テストでは水槽中で膨らませたバルーンに0.02%程度密度の異なる液を注入し,もとの液を擾乱することなく入れかえができることが確認できた.キセノン溶解用の液体シンチレータは成分(デカン,プソイドクメン,PPO)の混合比や温度を変えてキセノンの溶解度と液の密度を詳細に測定した.キセノンの溶解度はより高いことが望ましいが,予測を上回る3%の重量比が可能なことが判明し,液密度の制御に必要なデータが得られた,さらに発光剤(PPO)を調整しカムランド液体シンチレータと同じ発光量にできることもわかった.これらをもとにキセノンガスシステムの設計が終了し,ガスの貯蔵,液体シンチレータへの溶解と密度制御,キセノン回収を含む装置が建設された.バルーン製作に不可欠のスーパークリーンルームも借用が可能となった.現在クリーンフィルム候補として試作したナイロンとEVOHの多層膜のテストを遂行中である.実験開始まであと一歩である.
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