2011 Fiscal Year Annual Research Report
カムランドでの超高感度2重ベータ崩壊探索を目指す検出器の開発研究
Project/Area Number |
21244025
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 淳平 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 准教授 (90171032)
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Keywords | 素粒子実験 / ニュートリノ / カムランド / 2重ベータ崩壊 / 液体シンチレータ |
Research Abstract |
前年度は実寸大ナイロンフィルム製ミニバルーンを製作し,大型水槽を使った検出器投入と液の入れ替えの模擬試験を行い,キセノンを溶かし込むデカンベースの液体シンチレータの開発を終えた。本年度は(1)本番用ミニバルーンの製作とカムランド検出器への投入,(2)キセノン入り液体シンチレータの作成と純化,(3)運転条件を最適化したキセノンガスシステムを使ってのキセノン入り液体シンチレータのミニバルーンへの注入,が目標であった. 項目(1)では添加剤なしのクリーンナイロンイルムを複数の候補から最終決定し,フィルム溶着方法の最適化を行った.またミニバルーンを吊るすナイロンベルトの構造を改良した,製作場所としてクラス1のスーパークリーンルームを利用し,超音波洗浄機を用いて超純水によるフィルム洗浄も行った.製作後はヘリウムリーク試験を行い,並行して開発した補修方法により漏れがないミニバルーンを完成させた、なおミニバルーンと検出器最上部をつなぐ連結管(硬質ナイロン製コルゲート管)および関連する接続部材について種々の確認テストを行いミニバルーンに接続した. 項目(2)と(3)はキセノンガスシステムと液体シンチレータシステムの性能を確認後,キセノン入り液体シンチレータを作成し検出器に投入したミニバルーンに注入した.ミニバルーン投入では,開発したモニタリングシステムを使い画像,重量計測値を見ながら慎重に作業を進め成功裏に行うことができた. 以上の結果,予定通りカムランド検出器の中央部にミニバルーンが設置されキセノン136核の2重ベータ崩壊探索実験を開始することができた.しかし,データを解析した結果,微量ながら予測外の放射性元素による邪魔物反応が検出され本研究計画の目指す超高感度測定には至らず改善の余地があることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災からの復旧作業で一連の研究遂行が当初は大きく遅れたが,バルーン製作と検出器への設置を終え,2重ベータ崩壊探索実験を開始できたことは計画以上の進展と言える.しかし微量とはいえ予想外の放射性同位元素による邪魔物反店が存在し超高感度探索実験の障害となることが判明した.本研究計画を完成させるため原因の解明と装置のクリーン化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
観測されたエネルギースペクトルには2重ベータ崩壊の注目すべき信号領域に邪魔物反応によるピークが現れ,本研究計画の目指す超高感度探索実験の障害となっている.原因として福島第一原子力発電所の爆発事故で放出された放射性元素の混入も考えられる.平成24年度はすでに開始した汚染経路の解明と対策,システムのクリーン化をさらに進め目標感度の達成に全力を注ぐ.クリーン化として液体シンチレータのフィルトレーションに加えキセノンガスの分離精製を効率的に行い,本研究計画を完成させる.
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