2012 Fiscal Year Annual Research Report
新型核スピンメーザーの電気双極子モーメント測定への適用
Project/Area Number |
21244029
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
旭 耕一郎 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80114354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 武 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30435680)
上野 秀樹 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 研究員 (50281118)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 原子核実験 / 核スピンメーザー / 精密周波数計測 / 原子EDM / CP非保存 |
Research Abstract |
スピンメーザーはスピン歳差を無制限の長さの時間維持する機構である。本研究では、低磁場で発振が可能な新しいタイプのスピンメーザーである光検出・外部フィードバック型核スピンメーザーを開発し、これを核スピンの歳差計測が本質的な役割を果たす129Xe原子の永久電気双極子モーメント(EDM)の高感度探索に応用することを目指している。 前年度までの開発で、129Xeのメーザー発振の周波数精度には129Xeガス封入セルの温度変化に伴うRb原子の数密度変化が大きく影響することが明らかになった。これは偏極Rbとの衝突シフトによって129Xeの周波数が変化するためである。この効果を抑制するために偏極生成部(ポンピング部)と歳差運動検出部(プローブ部)から構成されるダブルセルの開発を行った。ダブルセルを用いる場合、従来考えられていたスピン交換による検出プロセスの他に、129Xeの磁化に起因する検出プロセスがあることを見出した。新たな検出プロセスを加えたメーザー発振の最適化条件を再評価し、実際にダブルセルを用いた129Xeのメーザー発振を実現した。その結果、偏極したRb原子との衝突に起因する周波数シフトの揺らぎを1桁以上抑制することに成功した。 また、本研究で用いる能動帰還型核スピンメーザーの最大の特徴である発振安定性を最大限に活かすため、印加磁場安定化に向けた開発を行った。前年度までに導入した従来の10倍の磁気遮断率をもつ大型磁気シールドに加え、熱雑音を抑制するためのフェライトシールドの製作を行い、現在それらを用いた新たなスピンメーザーのセットアップを構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
129Xeの周波数精度に大きく影響を及ぼす原因を特定し、その対策としてダブルセルの開発を行い、実際に偏極Rbとの衝突に起因する周波数シフトを1桁以上抑制することに成功した。また、磁場安定化に向けた新たなセットアップも間もなく完成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はさらなる磁場安定化に向け、フェライトシールドへの漏れ磁場の影響を極力抑制した二層分割型ソレノイドコイルの設計・製作を行う。また、ダブルセルを用いた核スピンメーザーの性能向上を狙う。ダブルセルを用いたメーザー発振では、セル形状の選択も重要な要素となる。ポンピング部とプローブ部の体積比や、連結チューブの長さの最適化を行い、系統誤差を抑制したうえで、さらに十分な129Xeの信号を検出できるような最適なセル形状を決定する。これらの開発により目標とする1 nHzの周波数決定精度をめざし、未踏の領域の129XeのEDM測定へ向けた足がかりとする。用の実現を目指す。
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