2011 Fiscal Year Annual Research Report
変位雑音相殺技術を用いた標準量子限界を越える量子非破壊干渉計の開発
Project/Area Number |
21244037
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 修一 法政大学, 理工学部, 准教授 (30425409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 竜太郎 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (60270451)
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Keywords | 重力波 / レーザー干渉計 |
Research Abstract |
本年度は真空環境下におけるDFI干渉計の感度評価をおこなうと共に,モノリシック干渉計の設計・制作・実装など雑音低減対策を進めた. 前年度までの実験結果を総合すると,干渉計を構成する光学素子の純粋な並進運動による変位雑音の他に,広い意味での干渉計の非対称性が干渉計の感度を制限していることが示されてきた.これら雑音の源あるいは伝播経路をひとつずつ排除することで余剰雑音を低減し,感度の向上をはかった.前年度の干渉計真空化に引き続き,今年度は干渉計部の固定化したモノリシック光学系を採用することで大幅な雑音の低減,感度向上を実現した.DFI機構による変位雑音の相殺,および干渉計部の真空化などによる対処では改善しなかった主に1kHz以下の低周波領域での余剰雑音が一挙に低減した.これは一義的には変位雑音自身が抑圧された効果が顕著に見えていることに相当する.一方で,それ以外にも干渉計のある種の非対称性が抑えられる効果があり,これによって双方向の干渉計に関する感度の差が大幅に小さくなっている.これによって潜在的にはDFI機構の効率の改善が期待される. モノリシック干渉計を用いたDFIでは,シングルMZIで1kHz以下に残っていた余剰雑音の多くがDFI機構によって相殺されている.結果として,数10Hz以上の周波数帯域ではほぼ散射雑音レベルの感度を実現した.しかしながら数10Hz以下には依然相殺しきれないフロア状の余剰雑音が残存している.この周波数領域における散射雑音レベルでの計測では,突発的な地面振動励起によるスペクトルの悪化が無視できない.もう少し広い領域に渡る広い意味での防振が必要ということである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機構の原理検証実験とは異なり,装置の雑音をひとつひとつ低減しつつ進める実験のためある程度時間がかかることは織り込み済みである.一方で当初のDFI感度からすれば格段の感度向上が実現されていることと,雑音低減の方法論として一定の明確な方向性が得られていることから,次のステップへ向けて着実に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
1Hz程度までの周波数帯域で光の散射雑音レベルに到達する一定の目処がたったことから,計測システムとしては本来の目的である「標準量子限界観測」に大きく近づいたと考えてよい.今後は,更に必要とされる散射雑音レベルまで余剰雑音を低減することと,自由質点を実装することによって標準量子限界へのアクセスを目指す.
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