2011 Fiscal Year Annual Research Report
半導体表面および界面の2次元系における新しい自由度と電子状態
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21244047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 徹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60245371)
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Keywords | 低温物性 / 表面・界面物性 / 半導体物性 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
(1)強い電子間相互作用をもつシリコン2次元電子系に対する新しいプローブとして、サイクロトロン共鳴実験を行っている。本年度は、自作したベクトルマグネットを用いて、スピン偏極下での測定を行った。強相関2次元電子系に見られる共通した特徴として、面内磁場印加に伴うスピン偏極によって電気抵抗が大きく増大することが挙げられるが、スピン偏極に伴いサイクロトロン共鳴吸収の線幅は増大し、電気抵抗から得られた散乱時間と線幅から得られた散乱時間は、ともにスピン偏極に対して減少することが明らかになった。また、0.1~10GHzの周波数帯での電気伝導率の測定を、金属絶縁体転移領域を含む広い電子濃度範囲で行った。さらに、サイクロトロン共鳴実験をWigner結晶領域で行うために、希釈冷凍機に測定系を組み込んだ。 (2)吸着原子により誘起した劈開表面2次元電子系に対して、液体ヘリウム温度においてSTMとの同時観察を行った。まず、STMを用いた表面観察により、これまで行ってきた蒸着量の見積もりに大きな誤りがないことが確認できた。また、InAsにAgを吸着させた系およびInSbにAgを吸着させた系において、トンネル分光測定を行い、明瞭なランダウ準位を観測した。 (3)新しい展開として、絶縁性GaAs基板上に金属超薄膜を作製し、単原子層の超伝導をBiおよびPbに対して観測した。Pbの超薄膜に対して面内磁場を印加したところ、Pauli限界をはるかに超える強い磁場に対しても超伝導転移温度はほとんど変化しないことが明らかになった。Pbはスピン相互作用が非常に強く、また単原子層膜においては空間反転対称性が強く破られているため、Rashba効果が関与した新しいタイプの超伝導の可能性が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
絶縁性GaAs基板上に作製された金属超薄膜の研究において、予想以上の興味深い性質が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元超伝導の研究を主要テーマとしてさらに発展させる。
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Research Products
(6 results)