2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21244060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河野 公俊 The Institute of Physical and Chemical Research, 河野低温物理研究室, 主任研究員 (30153480)
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Keywords | 超流動 / ^3He / ^4He / 液面電子 / イオンプール / 薄膜 / 表面束縛状態 / 量子渦生成 |
Research Abstract |
超流動^3Heの表面や境界に出現する特異な現象を解明するために、ヘリウム液面上の電子や液面下のイオンをプローブとしたユニークな研究を展開することを目的とする。具体的な目標として、イオン伝導度による表面束縛状態の直接検出、櫛形電極を用いた超流動^3Heフィルムフローの測定、それに加え、超流動^4He自由表面で見られた、イオン運動に伴う量子渦生成のメカニズムなどに関する研究をあげることができる。 今年度行なった実験は以下のとおりである。1)超流動3He表面下に蓄えたイオンプールによる表面束縛状態の直接測定に向けた実験セルなどの作製を行なった。イオンを電界放出あるいは電界乖離によって発生させるためのタングステン針の作成と特性評価、超流動^3Heと冷凍機の熱接触を確保するための銀粉焼結熱交換機の作成と特性の評価を行った。2)フィルムフローによる^3He薄膜の超流動オンセット温度の膜厚依存性を詳細に測定し、解析を行なった。その結果、1ミクロン付近の膜厚において理論で予想されるオンセット温度の抑制よりもより大きな抑制があることが、確実となった。また、この抑制が磁場には依存しないことも明らかになった。超流動^3He膜が保持することのできる超流動性の流量に2種類の値が現われる現象が見られた。何らかの双安定性を示す結果であると考えられるがその原因についてはまだ不明である。磁場を印加することによってこの双安定性が消失するという事実も発見されたが、そのメカニズムの解明は今後の研究を待たなければならない。3)超流動^4He表面下に蓄えたイオンの運動によって量子渦が生成される現象に、臨界速度があることが明瞭に観測され、その温度依存性に関して巨視的トンネル現象との関連について考察を行なった。
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Research Products
(27 results)