2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21244060
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
河野 公俊 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 主任研究員 (30153480)
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Keywords | 超流動 / 3He / 電子バブル / イオンプール / 表面束縛状態 / マヨラナ / 易動度 |
Research Abstract |
本研究は、異方的超流動の典型である、P波超流動^3Heの表面や境界に出現する特異な現象を解明するために、ヘリウム液面上の電子や液面下のイオンをプローブとした研究を展開することを目的とする。平成23年度には、イオンプールの伝導度測定による超流動3He表面束縛状態の直接検出あるいはイオンと表面束縛状態の相互作用に関する知見を得ることによって、表面束縛状態がマヨラナ粒子としての性質を持つと考えてよいかどうか明らかにすること、またマヨラナ状態の証拠となる、磁気的な異方性を観測するために偏極スピンの表面下への導入とその緩和率測定を開発することを計画した。今年度は、昨年度に開発したヘリウム表面下の負イオンプールの伝導度測定を超流動^3He中で詳しく測定した。電子バブルと呼ばれる負イオンを表面下に捕獲して液面と平行に動かして、その抵抗を測定した。超流動^3Heの温度を直接測定するためにバイブレーティングワイヤーが設置されている。超流動^3He-Bにおいて、温度の下降とともに易動度が増加するが、表面からの深さに実験精度の範囲で依存しないことが分かった。この結果は、表面束縛状態がマヨラナであった場合、電子バブルとの散乱が厳密に消失するという理論的予測と矛盾がない。その一方で、仮にマヨラナでなかった場合とのコントラストがどの程度あるのかということがはっきりしていない現状においては、不確定さが残る。古典的なモデルに基づく考察によれば、150マイクロK程度まで超流動^3Heを冷却して、なお現在得られている結果が変更されなければ、マヨラナであることがかなりの確度で結論される。これは将来に残された課題である。一方スピン緩和率の異方性を調べるための、光学測定の準備が進捗し、表面下に捕獲したBaイオンのレーザー分光を初めて実現することに目処が立った。
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Research Products
(20 results)