2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロマニピュレーションによる非平衡基礎論の展開
Project/Area Number |
21244061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 雅己 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40150263)
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Keywords | 非平衡統計力学 / 光ピンセット / コロイド / 情報統計力学 / マイクロマニピュレーション |
Research Abstract |
本研究では、近年急速に発展を遂げているマイクロマニピュレーション技術を用い、これも発展が著しい非平衡基礎論の分野に観測・外部操作の概念を取り入れた基礎論の枠組みを展開することを目的として研究を行った。その目的を達成するため、非平衡系のプロトタイプとなる実験系を構築し、精密実験により新しい非平衡関係式の検証と展開を行った。具体的には、(1)マイクロマニピュレーションを用いた非平衡関係式の検証とマクスウェルの悪魔の検証実験、(2)温度勾配と熱泳動現象に関連した状況下における非平衡定常状態の統計力学理論の検証を目的として研究を行った。3年間の研究により(1)に関しては、回転電場を用いたコロイド粒子系の実験で観測情報に基づいたフィードバック操作を行い、外部トルクに逆らってコロイド粒子対を回転させることに成功するとともに、情報量と自由エネルギーの変換効率の定量的評価、一般化Jarzynski等式の初の実験検証に成功している(Toyabe et al.Nature Physics,(2010))。この結果は、News&Viewsで紹介されるとともに、国内外の多くのメディアで取り上げられ高く評価された。さらに、詳細やゆらぎ定理を検証するために精密な制御が可能なスキャン型レーザーピンセットとコロイド粒子を組み合わせた実験系を実現し、フィードバック存在下での揺らぎ分布を測定するとともに、操作速度を変化させた場合の仕事効率の測定を行うことに成功した。(2)に関しては、非対称コロイド粒子に誘起される局所的温度勾配による遊泳現象を研究し、新規のメカニズムで運動するミクロンサイズの自己駆動粒子を作成し、理論的な解析と比較を行った。APS編集部のEditor'ssuggestionに選ばれるとともにPhysicsにハイライト紹介された。
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Research Products
(4 results)