2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21244066
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鍋川 康夫 独立行政法人理化学研究所, 緑川レーザー物理工学研究室, 専任研究員 (90344051)
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Keywords | アト秒パルス列 / 高次高調波 / 軟X線 / 非線形光学 |
Research Abstract |
平成23年度の実施計画に従い、短波長(約710nωのチタンファイアレーザーシステムの設計と開発を進めた。基本設計は次の通りである。既存のチタンサファイアレーザーの短波長成分をオフナー型のパルス伸延器(回折格子溝密度2000g/mm、オフナー光学系は曲率半径600mmの凹面鏡と-300mmの凸面鏡で構成)を用いて切り出して伸延し(パルス幅400ps程度)、再生増幅器で100μJ程度のパルスエネルギーまで増幅する。その後、3~5パス程度のマルチパス増幅器で2mJ程度のエネルギーを得る。これを回折格子によるパルス圧縮器に通して、パルスエネルギー1mJ程度、パルス幅100fs程度のレーザー光を得る。波長のチューニングについては、チタンサファイアの利得スペクトルをもとに注意深く設計した部分透過フィルターを最適化設計・開発し、これを再生増幅器及びマルチパス増幅器に挿入する事により実現する設計である。 実験では再生増幅器までほぼ計画通りに進み、所望のエネルギーとスペクトルが得られたが、マルチパス増幅段でエネルギー取り出し効率が極めて低く、mJクラスの増幅が困難であった。この時、励起レーザー光の出力低下の問題が生じていることが判明したため、新たな励起レーザーを別途確保した上で、これを用いた新たなレーザーシステムを組み直す作業を行う事となった。 これらの研究と同時に、高強度アト秒パルス応用実験の試験の為に、サブ15fsチタンサファイアレーザーを用いた高次高調波ビームラインを構築し、これによって重水素分子及び窒素分子のイオン化実験を行った。短寿命蛍光のフォスファースクリーンをマイクロチャンネルプレートに組み合わせたイオン検知器の画像をCCDカメラで記録する事により、イオンの角度分布を測定する事のできる、「速度マップ画像計測(Velocity Map Imging, VMI)測定装置」を新たに立ち上げ、高次高調波による重水素イオンと窒素イオンのVMI計測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1の理由は、当初の波長可変OPAスキームでの高効率な赤外光増幅が困難であったことから、これをオクターブ超の広帯域増幅の手法に変更した事による。第2の理由は、この手法で用いる為の励起グリーンレーザーの故障が原因である。新たな励起グリーンレーザーの調達後、速やかにレーザーシステムを復帰させる事が必要である。高次高調波の応用実験については、イオンのVMI計測を装置立ち上げる事ができ、概ね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
チタンサファアイアレーザー励起用の新たなグリーンレーザーが稼働出来る状態になった後、速やかにレーザーシステムを立ち上げて行く。再生増幅器までは既に開発済みであるので、後段のマルチパス増幅器の開発に注力する。エネルギー取り出し効率が低い原因を探るため、チタンサファイア結晶の交換、冷却機構の強化等の改良も進めて行く。チタンサファイアレーザーが所望の仕様を満たせば、引き続き赤外の光学パラメトリック増幅(OPA)の実験に進む。白色光発生の最適化等を行った後、オクターブ超の赤外増幅の実証実験を行って行く。高次高調波の応用についてはVMI計測装置の改良(ゲート電圧の改善、データ取得の高速化等)を進めながら、アト秒領域の分子ダイナミックスの観測を目指して行く。
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Research Products
(15 results)