2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21245002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森田 明弘 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70252418)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 表面 / 界面 / 和周波発生分光 / 分子動力学 |
Research Abstract |
界面和周波発生分光は、2 次の非線形光学過程を利用して界面特有の振動スペクトルを敏感に捉えることのできる実験手法で、近年表面・界面の構造解析手法として広く用いられるようになった。この手法は、界面分子一層かそれ以下での吸着量の感度をもち、表面の分子種や局所的な環境、分子配向などについて豊富な情報を提供する。とりわけ界面選択性が反転対称性の破れに由来するために、原理的に真空条件を必要とせず、その特長を生かして液体や高分子表面、液液・固液界面のような埋もれた界面など、従来の表面科学にとって分子レベルの研究が比較的未開拓な界面への適用が特に注目されている。本研究は、申請者が世界に先駆けて提案した界面和周波分光の理論を深化させて和周波発生現象の全貌に対する精緻な理解を確立するとともに、分子モデリングと分子シミュレーションに基づく非経験的な計算手法を開発し、和周波分光実験のもつ詳細な界面情報を精度良く引き出すことのできる実用的な理論と解析手法を確立することを目的としている。 これまでに和周波分光の理論計算手法としてエネルギー表示の理論と時間依存表示の理論を提案した。本課題ではとくに後者の理論開発を進め、国際的にも最も精密で信頼性の高い理論解析手法を確立した。分子モデリング手法の開発に基づいて、水や水溶液のOH伸縮振動、さらに有機分子液体の界面など多くの界面に応用してそのスペクトルの微視的な理解を実現した。大気化学において重要な硫酸エアロゾル表面の酸解離も実験との共同研究によって明らかにした。アルキル基のC-H伸縮をフェルミ共鳴を含めて扱うモデリング手法を開発し、メチル基の和周波スペクトルを解明した。ベンゼンのような点対称性をもつ分子からなる界面の和周波スペクトルが発生する機構を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
界面和周波分光の理論計算手法は、本研究グループが国際的にも初めて開発したものである。非線形感受率の理論自体は正しいにせよ、実際の物質に対して十分に妥当な精度で計算を行うことができるか、また実験の解釈にどこまで実際に役に立つ手法となるかは、研究開始当初には未知数であった。しかし本課題でなされた研究成果は、単に理論計算手法のデモンストレーションにとどまらず、多くの実在系の界面の実験を解明するのに非常に有効であることが確立された。今後の界面和周波分光の発展にとって、理論計算との共同研究による解析が広く行われることが予想され、そのための基盤となる成果を与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果により、本課題で開発されてきた理論計算手法は、界面の非線形感受率 chi2 を与える手法として有効であることが実証された。今後の課題は大きく2つの方向性があると考えられる。一つには、汎用的な分子モデルおよびプログラムの高並列化をすすめて、より大規模で一般的な界面系を扱うことができるように発展させることである。もう一つは、界面の非線形感受率 chi2 だけでなく、界面分光に関わる高次の分極の効果や界面の局所電場なども理論的に精密に扱って、界面分光の全貌を明らかにすることである。今後その二つの方向に向かって研究を進展させる予定である。
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