2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21245004
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 晃一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40175659)
|
Keywords | 有機薄膜太陽電池 / エキシトン・ダイナミクス / 電子移動ダイナミクス / 励起エネルギー移動 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、電子供与分子/電子受容分子の異種界面での電子ダイナミクスと励起エネルギー移動に関して研究を行った。 有機薄膜太陽電池界面における電荷対生成の高効率化を目指し、電荷対生成過程の初期過程であるドナー分子からアクセプター分子への電荷移動反応が高効率におきる励起状態や界面配向を探索することを目的とした。ドナー分子としてtetrabenzoporphyrin(BP)、アクセプター分子としてbis(dimetylphenylsilylmethyl) [60] fullerene(SIMEF)からなる分子複合系をマーカス理論により解析したところ、ドナーの低励起状態ほど電荷移動速度が速いことがわかった。これは、有機薄膜太陽電池が利用可能な可視光エネルギー領域がマーカスの逆転領域に相当するためである。次に界面におけるドナーとアクセプターの分子間配向を変化させたところ、ドナーの励起状態毎に最適な分子間配向が異なることがわかった。つまり、光電変換に利用するエネルギー領域毎に最適な界面配向を用意することで電荷移動をより高効率に起こすことが可能であるとわかった。 今後は、ドナー励起状態から電荷移動状態についての界面配向設計を他の材料候補へ応用すると共に、有機薄膜太陽電池の効率が上がらない大きい原因である界面における電荷再結合を抑制するための理論研究を行い、最適な有機ヘテロ界面の理論設計を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、表面・界面における熱反応あるいは光化学反応の物理化学的過程を統合的にシミュレーションすることを最終目的として捉え、その基礎となる表面・界面における (1) 局所励起ダイナミクス、(2) 反応量子ダイナミクス、(3) 緩和過程ダイナミクス、に対する新たな化学反応理論とシミュレーション体系の構築を目的とした。これまでに具体的に有機系太陽電池を取り上げ、電子供与分子/電子受容分子の異種界面での電子ダイナミクスと励起エネルギー移動の観点からとらえ、太陽光エネルギー変換過程の化学反応理論とシミュレーション法を構築できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
分子が吸着した固体表面がつくる界面に光を照射する、あるいは電子を注入することによる非断熱過程により、ナノ界面域での新規な動的機能発現が期待される。今後はナノ界面域での非断熱過程による動的機能発現のメカニズムの解明と、それら非断熱過程の量子制御について理論的研究を発展させる予定である。
|
Research Products
(10 results)