2010 Fiscal Year Annual Research Report
時空間分解低振動数ラマン分光法の開発とイオン液体融解過程の解明
Project/Area Number |
21245005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜口 宏夫 東京大学, 大学院・理学院系研究科, 教授 (00092297)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 耕一 学習院大学, 理学部, 教授 (90232678)
|
Keywords | イオン液体 / 格子振動 / ラマン分光 / 顕微分光 / 融解過程 |
Research Abstract |
低振動数ラマンスペクトルをより高い時空間分解能で取得できるよう、前年度開発した分光装置を改良した。 まず、これまでの低振動数ラマン分光装置を顕微鏡と組み合わせて測定の空間分解能を上げることで、数十マイクロメートル大の微結晶でも一個ずつ区別して測定することが可能となった。これにより、分子結晶やイオン液体の微結晶の測定において、結晶の形状や配向を逐一確認しながらラマン測定を行うことが可能となる。特に、イミダゾリウム塩のように、吸湿性を持ち、十分な大きさを持った単結晶を作成するのが困難な試料であっても測定が容易となる。さらに分光測定と並行して顕微鏡下での形状観察をすることが可能となるため、融解についてのより詳細な情報が得られると期待できる。 次に、検出に用いる電子増倍CCDカメラをCrop Mode、露光に使用しないチップをデータ転送に用いる高速読み出しモード、で使い露光時間を著しく短縮した。例えばアントラセン分子結晶の格子振動バンドを10ミリ秒で観測することができるため、より高速のスペクトル変化をも追跡することが可能になった。 さらに、波長計を用いてレーザーをコントロールすることにより、周波数ドリフトの影響を抑えて発振波長を長い時間(数時間以上)安定化させることを行った。その結果、長時間のレーザー発振のあいだに発振波長がヨウ素分子の吸収波長から外れるという問題が解消された。これにより、急速な融解過程の観測のみならず、結晶の生成過程のような長い時間が必要な観測にも本手法を安定して用いることが可能となり、本手法の応用の幅を広げることになった。 以上のように、これまでの装置の改良を行うことでミリ秒、マイクロメートルの高い時空間分解能を持つ、安定した低振動数ラマン分光測定が可能となった。
|