2011 Fiscal Year Annual Research Report
時空間分解低振動数ラマン分光法の開発とイオン液体融解過程の解明
Project/Area Number |
21245005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜口 宏夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (00092297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 耕一 学習院大学, 理学部, 教授 (90232678)
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Keywords | イオン液体 / ラマン分光 / 液体構造 / 局所温度 / 混合溶媒 / 不均一液体構造 |
Research Abstract |
我々の開発してきた、レイリー散乱のみを除去し低振動数領域を測定するラマン分光手法は、低振動数ラマンスペクトルの測定のみならず、通常のストークス領域からアンチストークス領域までの広範なスペクトル領域のラマン散乱を同時かつ高速に測定する手法として応用可能である。振動ラマン散乱のストークス・アンチストークス成分を同時に測定し強度比を比較することにより、その振動の熱平衡温度を検出することができる。そこで今年度我々は、イオン液体bmim[PF_6]についてbmimカチオンの326cm^<-1>の振動バンド、PF_6アニオンの740cm^<-1>の振動バンドそれぞれの振動温度に注目しそれらを独立に計測した。すなわち、カチオン・アニオンまわりの局所的な温度を検出し、それらに差が見られるかどうかを調べた。室温で液体状態にあるbmim[PF_6]を分単位で急速に加熱したところ、カチオンがアニオンよりも高い温度(数K)を持ち、それが十数分間持続するという非常に興味深い非平衡状態が見いだされた。この結果は、カチオン・アニオンの不均一な液体構造および、イオン種間の非常に遅い熱移動を強く示唆する結果である。均一な混合が考えられる分子液体混合系(シクロヘキサン-四塩化炭素)では類似の結果は見られない。 本結果はイオン種あるいは分子種選択的な温度追跡という新しい研究手法を提案するものであり、「分子温度」という新しい概念の創出につながる。イオン・分子種同士の熱的非平衡から液体構造の不均一性についての情報を得るこのアプローチは、イオン液体のみならず一般的な混合溶媒系の液体構造とその不均一性を議論する新規の研究につながる可能性を秘めている。
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