2010 Fiscal Year Annual Research Report
衝突エネルギー可変交差分子線による多次元化学反応ダイナミクスの可視化
Project/Area Number |
21245008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 俊法 京都大学, 理学研究科, 教授 (10192618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小城 吉寛 京都大学, 理化学研究所・鈴木化学反応研究室, 協力研究員 (60339108)
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Keywords | 励起酸素原子 / メタン / 交差分子線 / 化学反応 / メチルラジカル / 散乱 / 画像観測 / レーザー |
Research Abstract |
励起酸素原子O(^1D)は多くの安定化学種との間に大きな反応断面積を有する。これは標的化学種の化学結合への挿入により基底電子状態の中間体を生成し、やがて分解する挿入型機構に反応障壁が存在しないからである。しかし、例えば代表例であるO(^1D)+CD_4→CD_3+OD反応でもメタノール中間体(CD_3-O-D)を経る反応が主経路であるものの、他の経路としてO(^1D)とC-D結合が共線的な遷移状態を経由する引き抜き型機構も存在すると推測される。引き抜き反応はメタノールの電子励起状態のポテンシャルエネルギー曲面(PES)で進行するものであり、理論研究によると入り口付近に数kcal/mol程度の反応障壁があると予測される。しかし、挿入型機構と引き抜き型機構の反応生成物は同一であるため、後者の同定は困難であった。我々は、生成物CD_3の回転状態を選択した散乱分布測定により、引き抜き型機構の実験的検出に初めて成功した。今回は、さらに詳細な反応メカニズム解明を目指し、振動基底状態CD_3の回転状態分布と、振動励起状態CD_3の散乱分布測定を行った。CD_3のREPMIスペクトルには、面外変角振動(v_2=0-3)のホットバンドが観測されたが、その中で、最も強度の大きな0^0_0バンドの回転構造は、回転温度T_N=500KおよびT_K=50Kとした計算スペクトルでよく再現されることが分かった。この結果は、生成するCD_3が低いK準位に集中していること、すなわち分子回転の角運動量Nが分子平面に平行になることを示している。一方、CD_3の基底振動状態や変角振動励起状態の散乱分布には、挿入反応による前方散乱と引き抜き反応による後方散乱の二つの経路が明確に現れた。さらに、CD伸縮振動励起状態には前方散乱しか表れないこと、すなわち、引き抜き反応はCD伸縮振動を励起しないことを初めて明らかにした。結果はPhys.Chem.Chem.Phys.に発表した。
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Research Products
(3 results)