2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21245011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 佳久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30112543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311769)
福原 学 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30505996)
西嶋 政樹 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (70448017)
楊 成 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70456995)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光化学 / 超分子化学 / 不斉合成 / 複合超分子 |
Research Abstract |
光による不斉合成は本研究者らが先導する新しい研究分野の一つであるが、本研究では複合キラル超分子を用いる光不斉創成について研究を行い、今年度は次に述べる重要かつ有望な成果を得た。 (1) 従来未知であったアントラセンカルボン酸およびアントラセンジカルボン酸の不斉光二量化反応で生成するキラル二量体3種の絶対配置を、現時点で最高精度の理論化学計算RI-CC2法を用いて計算した理論円二色スペクトルと実測スペクトルを比較することにより、明確に決定できた。 (2) キラルなドナー・アクセプター系の立体特異的な光環化反応と光転位反応の選択性を基底状態ならびに励起状態コンフォマーの分布を制御することにより、高いレベルで制御できることを明らかにした。 (3) 従来、α-シクロデキストリンをキラル足場とし、γ-シクロデキストリンを束縛ホストとする複合超分子系で究極的とも言える化学収率98%、光学収率99%を同時に達成していたが、今回環状オリゴ糖であるサイクリックニゲロシルニゲロースを新規キラル足場とすることにより、束縛ホストなしでも同様に高い光学・化学収率が得られることを見いだした。 (4) 光学活性ベンズアミド誘導体TKS159をキラルテンプレートとする系において、1:1錯体のみならずより高次の複合体を形成し、不斉光二量化反応が飛躍的に促進されることを見いだした。 (5) これまでに得られた超分子不斉光化学に関する成果を「CRC Handbook of Organic Photochemistry and Photobiology」の1章としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)結晶化が難しいためにこれまで不可能であったアントラセンカルボン酸およびアントラセンジカルボン酸のキラル二量体3種の絶対配置を理論化学計算を援用して明確に決定できた。これにより、光二量化の前駆体となる錯体中での2つの基質の空間配置が明らかになり、機構解明が飛躍的に進展した。 2)従来制御が難しかったキラルなドナー・アクセプター系の立体特異的な光反応を高いレベルで制御できる方法を見いだし、この分野の促進に大きく寄与した。 3)従来、環状四糖のサイクリックニゲロシルニゲロースをキラル足場として高い光学・化学収率を得たが、これにより従来より簡便に究極的な光学・化学収率を得られたばかりでなく、他の光反応系への展開が可能になった。 4)キラルテンプレートとの高次複合体形成を利用して不斉光二量化反応を飛躍的に飛躍させる系を見いだしたが、これは従来のキラルテンプレートを用いる光不斉合成に大きな将来性を付与するものであり、今後のより高度な不斉光反応制御法としての展開が期待できるものである。 5)これまでに得られた超分子不斉光化学に関する成果を成書にまとめた。また、最新の論文は査読員全員の極めて高い評価に基づきChemical Communications誌の表紙を飾った。 以上の成果は、当初計画を質・量ともに超えるものであるので、達成度を(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
過去4年間の研究で、複合キラル超分子系を用いることにより光不斉合成としては極めて高い光学収率を達成し、このコンセプトの有用性が立証された。今年度は、従来の知見を総合し、より高度な制御と、より幅広い系への適用をはかる。これにより、当初目的としていた「複合キラル超分子を用いる光不斉創成」を新規な複合的学術領域として確立するとともに、同領域の応用も含めた将来展開への基盤を固める。 具体的な展開および取り纏めの方向としては次の4つの項目に取り組む。 1)温度、圧力、媒体、励起波長など外部環境因子によるより精緻で高度な多次元制御法を確立する。さらに、この概念をこれまで見いだしてきた良好な結果を与える複合キラル超分子系と組み合わせることで、究極的な光学・化学収率の両立を達成する。 2)前年までに、より困難ではあるが単一のキラル生成物が得られる交差光二量化系や、骨格がより柔軟で立体制御が難しいと考えられるキラル足場系でも、励起状態寿命の短さを活かした高選択性光反応が可能であることを見いだしている。今年度は、この新規反応制御法をより幅広い系に展開し、その適用限界を検証し、一般化を図る。 3)生体系についても、これまでに天然のタンパク質系ホストで得た成果を踏まえ、基質結合部位を特異的に変異させたタンパク質や、望みのものだけを作れるテーラー・メイドの抗体触媒的な手法を超分子光不斉反応系に取り入れ、自在に光不斉反応場を構築する新手法の開拓を行う。これについてもすでに初期的成果を得ているので、それに積極的に取り組み、新たな方法論として確立する。 4)将来の実用化への展開を見据えて、より容易に合成あるいは修飾可能なキラル超分子系を提案・構築し、それを利用して高い光学収率を達成する。具体的には、複雑な超分子系からエッセンシャルに必要なキラル部分の切り出しとその修飾により、目的を達成する。
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[Journal Article] Cyclodextrin Nanosponge-sensitized Enantiodifferentiating Photoisomerization of Cyclooctene and 1,3-Cyclooctadiene2012
Author(s)
W. Liang, C. Yang, M. Nishijima, G. Fukuhara, T. Mori, A. Mele, F. Castiglione, F. Caldera, F. Trotta, Y. Inoue
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Journal Title
Beilstein Journal of Organic Chemistry
Volume: 8
Pages: 1305-1311
DOI
Peer Reviewed
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