2011 Fiscal Year Annual Research Report
バイオインスパイアード触媒による新物質変換システムの構築
Project/Area Number |
21245016
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久枝 良雄 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (70150498)
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Keywords | ビタミンB12 / 有機光増感剤 / 光還元反応 / 脱ハロゲン化反応 / ポルフィセン / イオンタグ / イオン液体 / 光誘起電子移動 |
Research Abstract |
金属酵素は高活性・高選択的であるが、構造安定性に欠け応用範囲が狭いなどの欠点も多い。本研究では、ナノ空間材料と金属錯体等の組み合わせにより天然酵素を凌駕する機能をもつ触媒系を開発し、革新的触媒の開発を目指している。本年度は以下の成果を得た。 1)ビタミンB12-光増感剤の組み合わせによる触媒開発 ビタミンB12誘導体と有機光増感剤の組み合わせにより、可視光駆動型の触媒システムの開発に成功した。有機光増感剤については、ローズベンガルとローダミンBが優れた性能を示した。ビタミンB12誘導体に対して1/10モル当量のローズベンガルを用い、犠牲還元剤としてトリエタノールアミンを添加した系で可視光を照射するとビタミンB12誘導体はCo(I)状態に還元活性化した。この触媒系を用いてDDTなどの有機塩素化物の脱ハロゲン化に成功した。また、この触媒系は、ラジカル中間体を経由した官能基転位反応にも適用出来ることが明らかになった。 2)イオンタグポルフィセンの合成と光酸化反応触媒の開発 ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセンに着目し、環境適合型の媒体であるイオン液体中で反応を行うために、イオンタグポルフィセンを合成した。イオンタグポルフィセンは、好気条件で可視光照射すると一重項酸素を効率良く生成した。イオン液体中で一重項酸素による酸化反応に成功し、繰り返し使用できることを明らかにした。 3)ビタミンB12誘導体の光増感能の発見 ビタミンB12誘導体をトリエタノールアミン存在下イオン液体中で紫外線照射するとCo(I)状態に還元活性化することを見出した。これはビタミンB12誘導体の光増感能があることを示す結果であり、DDTのような有機塩素化物を添加すると脱ハロゲン化反応が進行した。これはビタミンB12誘導体が光増感能と触媒機能の両者の性質をもつことを示している。
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