2010 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素を用いる炭化水素類の触媒的カルボキシル化反応
Project/Area Number |
21245024
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩澤 伸治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40168563)
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Keywords | シリルピンサー型パラジウム錯体 / ヒドロカルボキシル化反応 / β,γ-不飽和カルボン酸 / C-H結合のカルボキシル化 / アリールピリジン / アリールピラゾール |
Research Abstract |
本年度の研究ではまず、シリルピンサー型パラジウム錯体を触媒とする1,3-ジエン類のヒドロカルボキシル化反応の検討を行った。その結果、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、種々の1,3-ジエンに対し触媒量のシリルピンサー型パラジウム錯体と1.5倍モル量のAlEt_3またはZnEt_2を作用させると、合成中間体として有用なβ,γ-不飽和カルボン酸が高収率で得られることを見出した。本反応ではパラジウム錯体とAlEt_3またはZnEt_2とのトランスメタル化/β-水素脱離によって生じるシリルピンサー型パラジウムヒドリド錯体が鍵活性種として機能し、1,3-ジエンのヒドロメタル化を起こす。これにより生じたシリルピンサー型σ-アリルパラジウム錯体が二酸化炭素へ求核付加することで還元的カルボキシル化が進行し、その後トランスメタル化を経由することで触媒活性種が再生する。 続いてメチルアルミニウム反応剤存在下、[RhCl(coe)_2]_2/P(Cy)_3を触媒とすることで、フェニルピリジン誘導体のo-位C-H結合のカルボキシル化が、1気圧の二酸化炭素雰囲気下で進行することを見いだした。本反応は様々な置換基を有するアリールピリジン類に適用可能であり、対応する2-(2-ピリジル)安息香酸誘導体が良好な収率で得られる。またピリジン環のみならずピラゾール基も配位性官能基として利用可能であり、基質一般性良くC-H結合カルボキシル化が進行する。本反応は,活性化されていない(酸性度の低い)芳香族C-H結合のロジウム(1)錯体への酸化的付加を利用してこれを活性化し、二酸化炭素と触媒的に反応させた初めての例であり、今後の課題である「単純炭化水素C-H結合の直接カルボキシル化」の実現に向けた第一歩として重要であると考えられる。
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