2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロニッケラサイクルを経由する水素移動型炭素―炭素結合形成反応
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21245028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
生越 専介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30252589)
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Keywords | ニッケル / 酸化的環化 / アルミニウム / 触媒反応 / 有機金属 |
Research Abstract |
本研究課題である「ヘテロニッケラサイクルを経由する水素移動型炭素―炭素結合形成反応」においては、これまでに合成あるいは発生方法を確立したヘテロニッケラサイクルを反応中間体とする種々の触媒反応についての検討を行った。本年度においては、特にアルデヒドをアルケンとニッケルとの分子内酸化的環化反応を鍵過程とするヒドロアシル化反応についての検討を行った。本反応の鍵中間体となるオキサニッケラサイクルは2004年に量論反応における合成を達成していた。そのため、触媒的分子内ヒドロアシル化反応へと展開することは研究をより意義深いものに昇華させる重要な鍵である。本ニッケラサイクルを鍵中間体とする反応においては、反応機構的にも脱カルボニル化反応等の副反応が完全に抑制されることが期待される。実際に、同様の分子内ヒドロアシル化反応をロジウムやルテニウムなどの既知触媒にて実施した際には、相当量の脱カルボニル化反応が進行する事が報告されている。これらの事実は、本研究におけるニッケル錯体触媒による分子内ヒドロアシル化反応が斬新かつ意義深い反応となることを強く示唆している。しかしながら、そのニッケル錯体の熱安定性から触媒反応への展開は未だ達成されていなかった。 そこで本年度は、触媒反応に使用する配位子を数多く合成し触媒条件の再検討を行った。その結果、量論反応では非常に良い結果を与えたPCy3やIPr配位子を用いた場合には低収率であったものの、IButやIAdなどの嵩高く塩基性の高い配位子を用いる事で非常に高い収率にて反応を実現する事ができた。さらに、期待通りに脱カルボニル化反応を完全に抑制することができた。これは錯体化学アプローチから予測した触媒設計が有用であることを示している物と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに概ね順調に進展しているものと考えている。錯体触媒合成に関しては、その設計段階に多少の試行錯誤が必要ではあったものの思い通りの錯体触媒が設計できた。ただし、新たな錯体触媒が示した新反応に関してはその反応機構解析に時間を要した。これは、本研究課題の成果を最大にするためには必要不可欠なプロセスで有り、今後の展開に期待がもたれる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、得られた知見をもとに新たな研究展開を目指す。具体的には、ニッケル原子のβ位に水素以外の元素を導入すること事で新たな反応の開発を目指したい。そのためには、効率のよい原料合成法の確立を行う。さらには、新しい錯体触媒合成法を開発する予定である。現在までに、非常に置換活性に富んだニッケル(0)錯体の大スケール合成法(グラムスケールに対応)を確立した。しかしながら、いくつかのリン配位子の導入には成功していない。これらを達成することでよりバリエーションに富んだニッケル錯体触媒ライブラリの構築を目指すと共にこれらの触媒に特有の新反応の開発を行う。
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Research Products
(10 results)