2011 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸酵素における、酸素還元と一酸化窒素還元の機能変換と分子進化
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21245041
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
城 宜嗣 独立行政法人理化学研究所, 城生体金属科学研究室, 主任研究員 (70183051)
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Keywords | 一酸化窒素還元酵素 / 亜酸化窒素 / 脱窒 / 呼吸酵素 / チトクロム酸化酵素 / X線結晶構造解析 / 温室効果ガス / オゾン層破壊 |
Research Abstract |
昨年の緑膿菌、Pseudomonas aeruginosaに引き続き、好熱性細菌(Geobacillus stearothermophilus)がもつ一酸化窒素還元酵素NORの構造解析に成功した。NORは、微生物の嫌気呼吸のキー酵素であり、一酸化窒素NOを還元して亜酸化窒素N_2Oに変換する(2NO+2H^++2e^-→N_2O+H_2O)。反応物NOが大気汚染気体NOxの一種であり非常に細胞毒性が強いこと、生成物N_2Oが二酸化炭素CO_2の約310倍の温室効果があり、なおかつオゾン層を破壊する気体であることから、環境科学の側面からも注目されている酵素である。病原菌もNORを有し、感染先のマクロファージが産生するNOを無毒化している。さらに、NORは好気呼吸の鍵酵素であるチトクロム酸化酵素と、共通の祖先を有していると考えられており、呼吸酵素の分子進化を考える上でも重要な酵素である。 サブユニットの組成(cNORはヘテロ二量体、qNORは単量体)と電子供与体(cNORはc型ヘム、qNORはキノール)であるにもかかわらず、その全体構造は両NORで類似であった。しかし、触媒反応に用いられるプロトンの輸送経路は全く異なっていた。cNORでは、細胞外領域(cytoplasmic side)から活性中心に向かってプロトン輸送チャネルが認められたのに対し、qNORでは、細胞内領域からの水チャネルが発見された。qNOR構造におけるこの発見は、今までcNORの実験からの予想とは全く異なるものであり、呼吸酵素の分子進化を議論する上で、重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、NORと共に、微好気呼吸酵素の結晶構造解析を計画していたが、ドイツのグループが2009年度にその構造を報告した。しかし、本申請者も予想外に2つのNORの構造を明らかに出来たので、反応機構解析と分子進化の議論は予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
cNORとqNORの2つのNORについて、結晶解析と分光解析によって各種配位子結合型や各種酸化型の構造情報を得る。加えて、NORの構造を基盤にして、分子動力学シミュレーションによるプロトンチャネルの働きの検証を行う。
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Research Products
(10 results)