Research Abstract |
本研究では,先端工業分野でのインテリジェント材料として急速に需要の高まった高分子微粒子の高機能化,特に異形高分子微粒子の精密合成法の確立を目指している。本年度は,制御/リビングラジカル重合の一つであるATRPを用いたシード重合法(seeded ATRP)より作製される,左右の半球部で性格の異なる非対称(ヤヌス)粒子および,これを用いて作製される刺激応答性マッシュルーム状異形粒子に焦点を当てた。これらは従来の低分子乳化剤よりも有用な粒子安定剤として特異な応用が期待される。 ATRPの重合開始基(Cl基)を有するクロロメチルスチレン(CMS)とメタクリル酸メチル(MMA)の共重合体[P(MMA-CMS)]及びポリスチレン(PS)から成る,ヤヌス状のP(MMA-CMS)/PSマクロイニシエーターシード粒子を溶剤蒸発法により作製し,シード粒子存在下でジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)のseeded ATRPを行うことで,片側のみにポリジメチルアミノエチルメタクリレート(PDM)層を有するヤヌス粒子の合成に成功した。PDMは34℃付近に下限臨界溶液温度(LCST)を有し,さらにアミノ基に起因するpH応答性も有している(pKa=6,8)。得られた粒子のPDM相も,温度に応じて体積相転移挙動を示した。しかし,DMの重合速度が非常に遅く実用的ではなかった。重合速度を向上させるために,CMSに代わり,より活性の高いメタクリル系且つBr基を有するプロモイソブチリロキシエチルメタクリレート(BIEM)を用いたところ,重合速度は飛躍的に上昇した。得られたヤヌス粒子の刺激応答性をピッカリングエマルション作製により検討したところ,LCST以下で,pHをPDMのpKaよりもアルカリ側に調整した系においてのみ,ピッカリングエマルションが形成され,粒子の刺激応答性についても確認された。
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